収穫の秋とともに、来年に向けての土作りも始まっているかもしれません。
今回は趣向を変えて、微生物の面から農作業との関わり合いについて考えてみたいと思います。
特に、いまの時期にやっていそうな耕耘との関係についてです。
微生物の生活
まずはそもそも、微生物はどんなところに住んでいるでしょうか?
土壌の深さ方向に見ると、地表に近いところにたくさんいて、深くなるほど減ります。
地表に近いほうが、食べ物(動植物の死骸)がたくさんあるし、大気からの酸素も豊富にあるため。
ただし、その中でも、特定の場所に偏在しています。
例えば、根の周りにはびっしりいます。
植物が、根から分泌する有機物を栄養分にして繁殖しています。
また、動植物の死骸の周りも同様の理由でびっしり。
土の中では、団粒構造の隙間にいます。
これは、団粒構造の隙間に、水分が存在しているためです。
微生物が栄養を取り入れることができるのは、水に溶けている状態のみです。
そしてまた、微生物は土に吸着しています。
肥料成分も同じく土に吸着しているので、こういった成分を取り入れるのにも都合が良いです。
微生物は、栄養の少ない条件のもとで暮らしています。
せっかく近くに有機物があっても、空気や土に隔てられていて、そこまで到達できません。
豊富な有機物があると、それを食べて急激に繁殖しますが、すぐに有機物は消費し尽くされて枯渇します。
手の届く範囲のわずかな有機物で細々と生き残り、残りは死んでしまうか、胞子のような形で休眠しています。
耕耘すると
以上のような状況を踏まえて、耕耘するとどうなるでしょう?
耕耘の機能としては、土塊を砕くことと深さや場所による状態の不均一をなくすことです。
従って、表面に偏在していた微生物は、耕耘により、ならされて深くまで入り込みます。
また、土や空気が邪魔で食べられなかった有機物が、耕耘により、微生物の手の届く範囲にもたらされることで新たに食べられるようになります。
さらに新鮮な空気も得られます。
これらの点から、耕耘直後は微生物は急激に増えます。
しかし、その後は新たに手に入れられた有機物も繁殖した微生物により食べ尽くされて、手の届く範囲にはなくなってしまいます。
さらに、耕耘で団粒構造が破壊されることにより、土も乾燥しがちになります。
この結果、しばらくすると、微生物は減ることとなります。
不耕起栽培の場合
不耕起栽培に取り組まれている方も多いと思います。
水分も安定しているし、土壌中の有機物の出入りもそんなに多くありません。
従って微生物の数は安定しています。
ただし、表面付近に多いとか、食物残渣の周りに多いと言った偏在はそのまま残ります。
望ましい耕耘は
以上のことから、望ましい耕耘を考えてみましょう。
まずは、耕耘により微生物が有機物を食べてしまうため、土が痩せることが懸念されます。
従って、堆肥や有機肥料を同時に施すことが必要となります。
あるいは、植物の残渣のすき込みなどでも良いでしょう。
耕したすぐ後は、微生物が急激に繁殖するため、土壌中の酸素分は欠乏します。
従って、定植などをする際には少し待ってから行う方が良いでしょう。
これらは当たり前のように言われていることだが、微生物の観点から頷けることですね。
<まとめ>
耕耘することにより、微生物は有機物を餌に急激に数を増やし、その後減っていきます。
したがって、耕耘の際には有機物を補給すること、耕耘後にすぐに植物を植え付けせずに少し寝かせることが必要となります。
<参考にした本>
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