今年は、例年より涼しくなるのが早かったですね。

暑がりの私には助かります。

助かるのですけれども、涼しければ涼しいなりの問題も。

暑さで少なくなっていた病害虫が、再び活動を始めます。

代表例としてはナメクジ。

ナメクジは、俳句では夏の季語ですが、被害が大きいのは春とか秋です。

そこで今回は、ナメクジについて取り上げてみたいと思います。

今回は特に防除について中心に述べていきたいと思います。

ナメクジの特徴

防除の話に入る前に、簡単にナメクジの特徴について書きます。

現在の日本で最もよく見かけるのは、チャコウラナメクジという種類です。

これは、ヨーロッパ原産の外来種です。

茶色っぽくて、縦に黒スジが二本入っています。

日本在来のナメクジにも、やはり黒い線が二本入っていますが、体の色が灰色っぽいので、これで区別がつきます。

以下、チャコウラナメクジ中心に話を進めますと、彼らは暑さは苦手で、寒さは得意です。

春に生まれて、冬越しして次の春に卵を産んで一生を終えます。

夜行性で、昼間は葉っぱや石の下などの湿ったところに隠れています。

夜中に這い出してきます。

移動速度は一分間に5センチくらいで、かなり遅いです。

主に、腐った植物を食べて生きています。

というだけならいいのですが、腐っていない野菜や果物も食べるので困ったものです。

防除方法:メタルアルデヒド系


ナメクジの防除に関しては、いろんな方法が提案されています。

まずは農薬での防除。

やはり何と言ってもこれが最も効果があがります。

ナメクジ用の農薬は、主に2種類あります。

一つはメタアルデヒド系、もう一つはリン酸鉄系です。

メタアルデヒド系の薬剤は、価格がリン酸鉄系の3/4くらいで、比較的お安めです。

ナメクジを引き寄せるために、穀物の粉や酒粕などと混ぜて粒にしています。

で、ナメクジがこれを食べると、体内でアセトアルデヒドに分解されて神経が麻痺して死にます。

ちなみに、人間がお酒を飲みすぎると体内でアルコールが分解されてアセトアルデヒドになります。

二日酔いで頭痛がするのは、このためです。

メタアルデヒドは、毒物及び劇物取締法の劇物に指定されており、摂取量次第ではありますが、他の動物や昆虫にもで影響を及ぼします。

したがって、製品によってはコオロギやバッタの防除にも使えます。

また、即効性で効果が分かりやすいのも特徴です。

ナメクジの場合は夜行性なので、昼間に撒いたとして、次の日に死んでいるのが分かります。

ナメクジに復讐心を燃やしている向きにはおすすめです。

ただし、注意点としてはやや水に溶けやすいこと。(メタアルデヒドの水に対する溶解度は0.02g/Lくらい)

雨により効果が著しく落ちます。

逆に、水に溶けやすいことを利用して、水溶液にして散布するタイプの農薬もあります。

ナメクジが葉っぱを食べた時に、その葉っぱについた薬で殺します。

水に溶かすタイプの農薬は、さらに防除効果が高いです。

リン酸鉄系駆除剤


リン酸鉄系はメタアルデヒド系と共に、よく用いられるナメクジ駆除剤です。

リン酸鉄は、土壌中に普通に存在する成分です。

従って、有機栽培でこれを使うこともできます。
(有機JASで認定されることが可能です)

これも、ナメクジを引き寄せるために、穀物粉を混ぜています。

性質は、メタアルデヒドと対照的です。

水にほとんど解けないため、雨に強いです。

ミミズや鳥への悪影響もありません。

水に溶けないので、魚に対しても大丈夫です。

ただし、ジャンボタニシには効きます。

水に溶けないとは書きましたが、酸には溶けます。

硫安などの酸性肥料の近くに撒くと、溶けるかもしれません。

効果は、ゆっくりです。

食べた後、肝臓や膵臓の機能を低下させて、数日で死に至らしめます。

ナメクジは食べた後でも動き回って、我々の見えないところで死ぬので、効果は見えにくいです。

むごたらしく死んだ様を見ないですみます。

しかし、私たちの散布行為により殺すことには変わりありませんので、念仏を唱えるなり、十字を切るなりして散布しましょう。

その他の農薬

カーバメート系と銅水和剤などがあります。

カーバメート系はいろんな種類があります。

いろんな害虫の防除に用いられますが、ナメクジ用はそれほど出回っていないようです。

銅水和剤は、ナメクジが銅を嫌うことから、これを水に溶かして散布します。

安価でかつ安全性が高いこと、また残効が高いことが特徴です。

これも有機栽培で使えます。

ただし、駆除ではなく、忌避効果をねらったものなので、残念ながら効き目は今イチです。

ナメクジ駆除剤の使い方

前述した通り、ナメクジは足が遅いです。

従って、できるだけナメクジが農薬にたどり着けるように薬をバラマキするのががよいです。

さらには水和剤等、水に溶かして使うものは効果もより高いです。

よく、「置くだけで簡単」等と銘打ったものもありますが、よほど場所が特定されていないとナメクジがそこまで到達できません。

粒剤としては、同じ重量であれば、粒は小さい方が高い密度でバラまけます。

ただし、粒が小さい方が表面積が大きい分、反応してしまいやすいです。
(リン酸鉄とか銅は大丈夫かもしれませんが)

また、毒性の高い粒剤は高密度で撒かなければならない反面、作物にかかる可能性があるので注意が必要です。

この辺りを考慮して農薬を選定しましょう。

自然農薬

ナメクジ防除といえば、何と言っても塩。

塩をかけることにより、浸透圧で体内の水分を奪って殺します。

しかし、ナメクジに効くくらい大量に撒くとすると植物もダメになる可能性が大きいでしょう。

塩以外に、同じように浸透圧を利用するのであれば、尿素や酢、えひめAIなども効くかもしれません。

尿素は私も以前かけてみましたが、結構効きました。

追肥もかねて、株の周りにばら撒きするのはよいかも。

酢やえひめAIなどは、死なないまでも忌避効果はありそうです。

ただし、こういった自然農薬は、完全防除というわけにはいきません。

その代わり、手軽に使えるメリットはあります。

自然農薬としては、石鹸なども有名です。

私も、展着材をかけて見たことがありますが、ナメクジにはイマイチでした。

その他の防除法

○銅板、コーヒーかす:

コーヒーカスは土壌に撒きます。

銅板は、地面に敷いたり、茎に巻き付けたりします。

これらはナメクジの忌避効果を狙ったものです。

でも、実際問題として十分な効果はないようです。

○ビール

ビールは、ナメクジを誘引する効果は強いようです。

ですが、これだけで殺すのは困難です。

これに農薬とかを混ぜる必要があります。

さらに、ナメクジがビールまで到達するには、多くの場所にたくさん設置しなければなりません。

ビールのお値段を考えれば割に合いません。

まとめ

防除法をここでまとめてみましたが、一匹一匹はごく簡単に殺せます。

が、畑から完全に駆除するのは極めて困難。

ナメクジのような弱い生き物ほど、駆除が難しいと実感します。

弱い生き物は、簡単に殺されるにもかかわらず、長い年月をしぶとく生き残ってきた、実は強い生き物とも言えます。

私たちも、「たかがナメクジ」などと侮らず、彼らの尊厳に敬意を表しつつ全力で打倒しましょう。

参考にした本

足立則夫 ナメクジの言い分 岩波科学ライブラリー

宇高寛子 田中寛 ナメクジ おもしろ生態とかしこい防ぎ方 農文協

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