夏野菜の栽培真っ最中と思いますが、葉物野菜や秋作の豆類など、秋に向けての育苗も計画していかなければなりません。

育てているときは、だれしも健康に成長させたいと思いますね。

健康に成長させるためには、苗にストレスを与えることが行われます。

例えば、潅水を控えめにして少し乾燥気味に育てる、

苗を撫でて物理的にストレスを与える、

モノによっては踏んづける、

強い光を与える、

高温に晒す、

などなどいろいろあります。

こんな風にいじめるとなぜ苗が強くなるのか、というのが今回のテーマ。

今回は、特に水ストレスを中心に述べてみたいと思います。

強くなる過程

水不足なり何なりのストレスが発生してから、植物が身を守るための反応はなかなか複雑です。

まず最初には、何らかのストレスが発生しているとして、それが発生していることを植物が知らなければなりません。

そのためのセンサーのようなものを、植物は持っています。

水不足の場合には、細胞壁の中にそのようなセンサーの機能がついていると言われています。

水がふんだんにある時には、膨圧といって細胞がパンパンに水ぶくれしていて、その圧力で植物は体を支えています。

それが水不足になると、この圧力が小さくなって、細胞壁を押す力が少し小さくなります。

これにより、植物は水が少なくなったと感知するらしいです。

それで、感知したときの反応として、まずは植物ホルモンが生成されます。

乾燥とか低温のストレスの時には主にアブシジン酸、傷とか感染とかではエチレンという物質が出てきます。

これが、植物の色々な対処を引き起こします。

この際に、カルシウムイオンとかリン脂質といったものが伝達役となります。

そして、これらにより特定の遺伝子が働いて、色々なのタンパク質を作ります。

具体的には、水分子や糖分、アミノ酸を運ぶタンパク質、

細胞内のタンパク質を保護するタンパク質、

傷んだタンパク質を修復するタンパク質、

浸透圧ストレスに応答して細胞内の溶質を蓄えて水が抜けるのを防ぐための溶質をつくる酵素、

ストレスにより発生する活性酸素を解毒する酵素

などです。

こうしたものを合成することにより、病気に負けない強い体が作られます。

水ストレスはどんな場合に起こるか

水ストレスは、単純に潅水を減らすと起こる、というのはあまり正確ではありません。

もう少し厳密にいうと、植物体内の水分量が減ることによって起こります。

さらにいうと、植物体内の水分量は、主に根から水分が吸収する量と、葉っぱから水分が蒸散により抜けていく量との差になります。

このうち、抜けていく量の方が大きくなると、ストレスがかかることになります。

ではどんな場合にストレスがかかるかというと、いくつかの場合があります。

一つは、蒸散量が増えた場合です。

例えば、空気が乾燥したり温度が高くなったりすると、葉っぱの表面の気孔が開きやすくなります。

その結果、蒸散量が増えて根から吸う量とのバランスが崩れ、ストレスがかかります。

もう一つは、根から取り入れる水分量が減った場合。

単純に、土の水分量が減った場合がこれに当たります。

それ以外に、根が少なすぎて水を吸う能力が低くなった場合もあります。

また、根は十分発達していて水が十分あったとしても、その水に溶けている肥料分が多いと、浸透圧の原理で水分を吸いにくくなり、ストレスがかかります。

色んな理由がありますね。

植物はどんな風に変わるか

軽度でもストレスが発生すると、細胞の成長が抑えられてしまいます。

ただし、植物の体の部位によって成長の具合は変わります。

地上部では成長は抑えられやすく、根は抑制効果は小さいです

根は、水を取り込むところなので、まだ供給される水分は多いためです。

茎とか葉っぱとか上に行くに従って、送り込まれる水分が少なくなります。

従って、多少のストレスがある状態でも根は成長を続け、枝分かれもしたりして、給水能を高めようとします。

逆に、葉は気孔を閉じて、呼吸や二酸化炭素の吸収を抑えます。

その結果として、光合成も抑えられることになります。

さらに、前回述べた植物ホルモンの合成とか、いろんな抵抗反応が起こります。

細胞内に糖分を蓄えて、浸透圧の原理から水が抜けるのを防ぎます。

さらにそれでも水分ストレスが治らなければ、葉の先っぽを枯らしたり、枚数を減らしたりして、必要な水分量を抑えようとします。

そして、最後には枯れてしまいます。

水分ストレスをうまく利用する

適度の水ストレスにより、根の発達が進むので、これを利用したいですね。

灌水量を常に一定にするのではなく、増減します。

たっぷりかけた後、しばらくかけないでおきます。

しおれかかった頃に、再び大量の水を与えます。

ちなみに、水分ストレスは日中は高く、夜間には低くなる傾向にありますので、日中の乾燥条件ではしおれに特に注意する必要があります。

注意点としては、急激にストレスをかけないようにします。

緩やかなストレスであれば植物も耐えることができますが、急激なストレスであれば、わずかなストレスでも枯れる危険があります。

また、培土にも、いろんな土を混ぜるようにします。

均一な土では均一に乾き、植物が利用できる水が一気になくなってしまいます。

均一な土であれば、いろんな水分状態になるので、植物が利用しやすいです。

セル苗などでは土の量が少ないので、やらないほうが良いです。

ポット苗など、ある程度の土があるもので行いましょう。

 

以上は、水ストレスについてですが、これ以外にも色んなストレスのかけ方があります。

なでる、踏む

撫でたり踏んだりして、物理的に植物を変形させるとストレスがかかります。

そして、これにより、茎が上に伸びずに太くなります。

これは、風の強い環境を考えてみると理解できます。

背がヒョロヒョロと伸びると、風で折れやすくなるので、低く太くなろうとするでしょう。

踏んだり、撫でたりするのも同じです。

最も有名な例としては、麦踏みがありますね。

他に、玉ねぎやネギなどユリ科の野菜では定植時に踏んづけることがよく行われます。

少々、茎がちぎれても平気です。

撫でる方では、イネで専用のローラーが市販されていて、これを苗の上から転がします。

その他、多くの野菜でもブラッシングしたり、少量では手で撫で付けることが行われます。

光を当てる

強い光もストレスになります。

有名なのは、ジャガイモの浴光催芽です。(時期的にはもう終わっていることでしょうが)

種芋を陽の当たる場所に置いておきます。

目安としては、1ヶ月ほど、10℃から20℃くらいの場所でです。

そうすると、太い丈夫な芽が出てきて、これを植えれば生育が早まり、病気にかかりにくくなります。

他には、大豆の土中緑化というのもあります。

大豆のタネを撒き、その上に不織布などを敷いてさらにその上に土をかけ、根を出させます。

その後何日かして芽が出た頃に不織布をとり、日光にさらします。

その時の不織布を取った直後は、茎や根は白いですが、日光を浴びることにより色がついて強い芽となります。

日光には、晴天で1日ほど、曇天では2日ほどです。

果菜類では、定植後しばらくして根洗いする人もいます。

水でじゃぶじゃぶ根の周りに水をかけ、根を露出させて光にあてます。

そうすると、根が太く緑色になり、病気に強くなったり根がびっしりと張ったりします。

熱をかける、冷やす

わざと高温、もしくは低温にさらす方法です。

人によりいろんなやり方をしますが、高温の方は、例えば40℃~50℃の中に数10秒~数分さらします。

低温の方は、例えば雪が積もっている中で種まきして、じっくりと発芽させるとかです。

光や高温、低温などのストレスが植物の体を強くするメカニズムについては十分明らかにされていません。

現象としては、これらのストレスにより、植物体内に活性酸素ができます。

これに対抗するために、ある種のタンパク質を出して抵抗力を高めるとされています。

まとめ

育苗時にストレスをかけることにより、苗を強くする方法がいくつか提案されています。

植物に、潅水を少しだけ控えめにするとか、苗を撫でるとかいったストレスを与えると、抵抗性が増して強い体が作られます。

これは、ストレスに対して、これに対抗する物質が体にできることによります。

人間と同じで、甘やかしすぎずに少しだけ厳しくするのが良いのかもしれませんね。

しかし、適度なストレスが重要で、やりすぎると逆に生育不良にもなりますし、枯れてしまうことにもなりかねません。

急激なストレスを与えないように、注意して慎重に試してみましょう。

参考にした本

幸田泰則 桃木芳枝編著 植物生理学 三共出版

伊豆田猛 植物と環境ストレス コロナ社

雑誌 現代農業 2006年4月号

関連投稿

育苗容器について