その情報、本当?
近年、健康意識の高まりにより、健康に関する膨大な情報が出回っています。
テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、インターネット、ありとあらゆるメディアから、健康に関する情報が流れてきます。
農作物を作る身になっても、気になる情報はいろいろとあります。
幾つか挙げてみますと、
・ 肥料を入れすぎた野菜は、硝酸態窒素が多量に含まれ、体に悪い
・ 遺伝子操作された作物は、健康に有害
・ 農薬を使いすぎた野菜は、体に悪い
・ 化学肥料を使った野菜は、栄養価が少ない
しかし、逆の情報もやはりたくさん。
・ 硝酸態窒素の多い野菜でも、体には悪くない
・ 遺伝子操作された作物を食べることによる健康への悪影響はない
・ 農薬は量を守って使われている限り大丈夫
・ 有機肥料や無農薬野菜は、体に悪い
結局、どっちなんだ?と迷ってしまいますね。
例えば、硝酸態窒素の場合・・・
このように正反対の主張が並存しているのは、いったいどういうことなのでしょうか?
結論だけ見ると正反対であっても、内容を詳しく見ていけばもう少し理解が深まるかもしれません。
ここでは、硝酸態窒素について、詳しく見てみましょう。
硝酸塩が健康に関する挙動は、まず硝酸塩が口の中の細菌により還元され、亜硝酸イオンができます。
これが、ヘモグロビン中の二価の鉄イオンを三価に酸化させます。
そうなると、ヘモグロビンの酸素を運搬させる機能がうまく働かなくなり、呼吸困難となります。
また、亜硝酸イオンは胃の中で、他の食物と反応して、発がん性のある物質にも変化します。
このような作用のため、硝酸態窒素は体に悪いとされています。
ちなみに、硝酸イオンの一日許容摂取量は体重1kgあたり数mgとされています。
私たちが硝酸態窒素を摂取するのは、主に野菜からです。
ちょっと野菜を多めに食べると、許容摂取量は簡単に超えてしまいます。
このような有害論に対して、これに反対する意見もあります。
野菜をたくさん食べると、硝酸態窒素の摂取量が増えるにもかかわらず胃がんが減るとの調査結果があります。
また、硝酸イオンから生じる一酸化窒素が殺菌効果を持つとか、心臓疾患の予防効果を持つとの説もあります。
結局、量にもよりますが、体にいいのか悪いのか、よくわかりません。
どうも、完全に結論は出ていないというのが実態と思われます。
以上は硝酸態窒素に関してですが、他のも推して知るべしです。
遺伝子操作された食品など、特に激しい論戦が繰り広げられていますね。
情報に惑わされないために
上記の硝酸態窒素の例を見てみると、いくつかわかることがあります。
一つは、硝酸態窒素のような古くからある問題でも、現在でも完全に健康への影響は解明されていないということです。
その結果、対立する意見が並存することとなります。
とすれば、断定的に「〇〇は△△だ!」と言い切る情報は疑ってかかる必要があるでしょう。
もう一つ、分量の問題も大きいですね。
水でも飲みすぎると腹を壊します。
猛毒のトリカブトでも、適正な処理をして適正な量を服用すれば薬となります。(漢方薬の附子、鎮痛剤や強壮剤として使用)
分量について何も言わずに、いいとか悪いとか言われているものは、不正確な表現と言えるでしょう。
それから、私たちは、すぐにいいとか悪いとかの結論に飛びつきがちです。
どうして、その結論に至ったかという過程については、書かれていてもあまり読む気はしません。
しかし、実際のところ、このような結論に至る過程をじっくり読んで吟味することも重要ですね。
その際には、素直に間に受けず、批判的精神で読む必要があります。
その情報によって、どんな人がどんな利益を受けるか、背景を考えましょう。
健康食品の会社は、当然その食品の健康効果を宣伝するでしょうし、テレビの健康番組は、インパクトのある扇情的な情報を流しがちになるでしょう。
大学教授のような専門家のご意見も、必ずしも安心できません。
その先生が御用学者であるという可能性だけでなく、メディアで発信する人が、その先生の研究成果のごく一部を針小棒大に取り上げている可能性もあります。
以上、いろんな注意点はあるものの、情報の正しさを判断することは、やはり難しいものです。
真面目な消費者で、健康に対する知識と興味の深い人ほど、誤った情報も真面目に受け取ってしまうという調査結果もあります。
いろんなことは言われますが、健康の基本は質、量ともにバランスの良い食事をすることと運動、休養を適度に取ること。
非常に地味ですが、これを基本理念として、あとはそんなに厳格に体に良いものを!と考えすぎない方がいいかもしれません。
ゆるく適当な、いい加減さも時には必要でしょう。
まとめ
健康に関する情報は溢れかえっていますが、それらは必ずしも正しくなく、かつ、どれが正しいかを判断することは非常に難しいです。
私たちは、細かな情報に振り回されず、運動、栄養、休息をバランスよくとるという、基本を守ることが良さそうです。