ビール私たちに最もなじみの深い微生物といえば、酵母を思い浮かべる人も多いでしょう。

今回は酵母について述べていきたいと思います。

酵母とは

まず、そもそもの酵母の定義ですが、カビ(糸状菌)と比較すればわかりやすいかと思います。

酵母は、カビと同じく真核生物(細胞の中に核がある生物)です。酵母

また、カビと同じく分類上の用語ではなく、いろんな種にまたがっています。

カビは多くの細胞が集まって紐状に成長するのに対して、酵母は単独の丸い細胞が孤立して暮らします。

と言っても常にそうだというわけではなく、例外もいろいろありますが。

酵母の繁殖の仕方も、カビと比較するとわかりやすいです。

カビは、主に胞子ができて繁殖しますが、酵母は分裂して繁殖します。

酵母の繁殖の仕方は、その中でもふた通りあります。

一つは丸い細胞の表面の一箇所にコブができ(出芽)、それが大きくなって、二つの細胞に分かれるタイプです。

私たちが、パンやお酒を作る時に利用する酵母が、このタイプです。

もう一つは、私たちの体の細胞分裂と同様のタイプです。

最初に中の核が二つに分裂して、それが二つに分かれて細胞が分裂します。

これら二つは、全く別の種類になります。

酵母というと、発酵して人間のために役立つ菌というイメージがありますが、人間の害になるのもいます。

有名なところでは、カンジタとか黒色酵母です。

これらは、いわゆる日和見菌です。

元気な人は大丈夫ですが、何らかの原因で弱った人に症状が出ます。

サッカロミセス

私たちが発酵食品などに利用する酵母は、いずれもサッカロミセス属というグループに属します。

その中でも、パンやお酒に使うのはサッカロミセス・セレビシエという種類です。

パン用の酵母はイースト菌とも呼びますが、サッカロミセス・セレビシエの中の特定の種類を純粋培養したものです。食パン

ちなみに、イーストとは英語で酵母という意味。

家庭でパンを作る時にドライイーストをよく使いますが、これはイースト菌を乾燥させたもの。

よく化学的に合成された薬品のように思われがちですが、そういうわけではありません。

もしも、乾燥させずにぬれていたら、酵母が激しく活動して、酵母の出す酵素で自分が消化されてしまいます。

それくらい酵母の出す酵素の力は強いです。

お酒に使う酵母はビール酵母が有名ですが、日本酒やビール、ワインなどそれぞれ種類は少しづつ違います。

さらに、味噌や醤油でも活躍する酵母は、サッカロミセス・ルーキシィという種類で、お酒などの酵母とはまた少し違う種類です。

好気性菌

ビールやパンは嫌気発酵により作られます。

つまり、酵母が酸素のない状態に置かれた時、糖分を栄養分にしてこれを分解し、アルコールと炭酸ガスを出します。

パンの場合は、炭酸ガスにより生地に気泡ができてふわふわになります。

また、焼くことによりアルコールが揮発して抜けます。

ただし、嫌気発酵するからといって、酵母は嫌気性菌というわけではありまえせん。

通性好気性菌に分類されます。

これは、普通に空気のある場所では酸素を吸って有機物を分解させて栄養とします。

酸素がない状態の時だけ、(仕方なしに?)嫌気発酵します。

アルコール発酵

酵母というと、なんといっても発酵。ビール

酵母、酵素、発酵と、いずれも酵の字がついている通り、酵母による発酵能力は高いです。

そして、発酵といえばお酒。

酵母はお酒を作る時に欠かすことのできない微生物ですね。

酵母は嫌気発酵により、糖分を分解してアルコールと炭酸を作り出しましす。

ただし、原料となる栄養分は麦とか米とか、デンプン質のものが多いです。

まずは、デンプンを糖に分解しなければなりません。

これは酵母は苦手。

従って、単にこういった栄養分と酵母を混ぜるだけではダメで、一工夫必要です。

日本酒の場合は、酵母以外に麹を用いることでこれを解決しています。

麹がお米のデンプンを糖に分解し、それを酵母が利用します。

ビールの場合は、麦芽を用います。

麦が芽を出す際、実に蓄えられていたデンプンを利用するために、種自体が分解酵素を出して糖に分解します。

これを酵母が利用します。

ワインのように、もともと糖分の多い果実(この場合はブドウ)を用いる場合は、このような工夫は特に必要ありません。

特に大したことをしなくても、ちょっと潰すだけで勝手に果実についた天然酵母で発酵が始まります(と言っては怒られるか)

発酵食品

酵母の発酵というと、アルコールのイメージが強すぎますが、お酒以外にも酵母を利用した発酵食品は数多くあります。タクアン

特に漬物が多いです。

酵母は耐塩性が高く、酸にも強いと言う性質があります。

多くの菌は塩にも酸にも弱いので、塩分と酸性の高い条件では生育できません。

従って食物を保存する時に、このような状態にすると、雑菌の繁殖が抑えられて、酵母が優先的に繁殖できます。

漬物を作る場合、塩分は人間が保存したい食物と一緒に入れることになります。

酸は、人間が酢酸を入れることもあれば、乳酸菌と一緒に繁殖させて、それを利用することもあります。

酵母の発酵を利用した漬物としては、タクアン、味噌漬け、らっきょう漬けなどがあります。

有効成分の合成

酵母は、発酵による高い合成能力を持ちます。

アルコール以外にも、いろんな有効成分を作り出すことができます。

各種有機酸、必須アミノ酸、ビタミン、脂肪酸等々。

これらは機能効果が高く、サプリメントなどにもよく使われます。

人間以外の、微生物や植物などにも有効です。

植物に対しては、酵母を利用した発酵液として、EM菌とかえひめAIなどがよく使われます。

いろんな植物の生育を促進すると言われていますね。

微生物の栄養にもなるので、酵母エキスは微生物を培養する時の培地にもなります。

まとめ

酵母は細胞一個で生活する菌。

いろんな種類がいますが、特定の酵母がパンやお酒などの発酵食品によく利用されます。

酵母は発酵力が強い菌です。

これにより、アルコールや、種々の有効成分を作り出すことができます。

他の菌の生育にも役立つし、酵母も他の菌の力を借りて自分も繁殖できるようになります。

協調性の高い、日本人好みの菌ですね。

<参考にした本>

大隈良典 下田親編 酵母のすべて シュプリンガージャパン

細矢剛 菌類の世界:キノコ・カビ・酵母の多様な生き方 (子供の科学★サイエンスブックス)

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