クモ2とクモの

農業と生き物との関係でいうと、ついつい害獣とか害虫とか作物に害を与えるものに目を向けがちです。

今回は益虫について、その中でも代表選手のクモを取り上げたいと思います。

空飛ぶクモ

クモは、慣用的にムシとは言いますが、昆虫ではありません。

クモ1昆虫は六本足で羽を持っていますが、クモは8本足で羽を持っていません。

ただし、空を飛ぶことはできます。

お尻から糸を出します。

その糸が、風や上昇気流で上に引っ張られます。

クモは地面につかまっていますが、そのうち、糸の上に伸びる力に負けて、空にビュッと飛び出します。

これがなかなかバカにならない、というよりは驚くべき大飛行となります。

どのくらい凄いかというと、飛行機で高さ2000mを超える上空からいろんなものを採取したところ、この空飛ぶクモがいっぱい取れたという話もあります。

また、陸地から数100km離れた海上の船の上で、同じく色々と飛んでくるものを採取したら、やはりこの空飛ぶクモがいっぱいとれたという話もあります。

イネの害虫のウンカは、東南アジアから飛来してくると言われますが、その天敵のクモも同じように渡っきている可能性もあります。

クモの糸と巣

このような話からもわかる通り、クモといえば第一の特徴は糸ですね。

お釈迦様がカンダタを助けるのにもクモの糸が使われました。

簡単に切れる、頼りないものの象徴です。

しかし、クモの糸は何種類もあります。

・獲物がかかった時に包み込む糸

・巣を作る時に最初に出す流し糸

・足場を作る糸

・我々に馴染みの深い、よくくっつくネバネバした糸

全て別の糸です。

クモの巣は、こうしたいろんな種類の糸を組み合わせて作ります。

蜘蛛の種類により、巣もいろんな形があります。(巣を作らないのもいます)

我々がお馴染みなのは、中心か放射線状に太い糸が伸びていて、その糸を支持体として同心円状にくっつく糸が貼ってあるやつ。

まじまじと見ると、とても美しいですね。クモの巣の水滴

特に、朝露や雨で水滴がついたものは幻想的です。

それだけではなく、バランス的にも優れています。

糸と糸の隙間が、あまり広すぎると獲物が引っかかりません。

逆に、密にしすぎると作るのが大変です。

糸は自分の体から栄養分を使って紡ぎだしているので、無駄にできないのです。

クモの巣に獲物がかからなかったら?

ところで、クモがせっかく巣を作っても、獲物がこなかったらどうするでしょうか?

諦めて、さっさと別の場所で巣を作るそうです。

ちなみに、人間が商売を始めても売れなかっららどうするでしょうか?

多くは、諦めきれずに粘って傷口を広げます。

これをサンクコスト効果といって、深みにはまって失敗する代表例です。

( 関連投稿 → サンクコスト効果の詳細はこちら )

クモは人より単純なわりに、理知的な行動を取ることができるのですね。

見習いたいものです。

クモの食事

それはさておき、植物を育てている人にとって、クモは心強い味方。

何と言っても、害虫をよく食べてくれます。

田んぼ一反で一日に10〜20万匹もの害虫を食べるとも言われています。

そこで今回は、クモの食生活を中心に述べていきたいと思います。

クモは、わずかな例外を除いて、基本的に肉食。

しかも死肉はたべず、新鮮な生きた動物のみを食べます。

獲物の捕まえ方は様々。蜘蛛捕食

巣を張って餌がかかるのを待つというイメージがありますが、徘徊して獲物に襲いかかるタイプも多いです。

巣を作るタイプと徘徊するタイプで、大雑把に半々くらいの割合になります。

徘徊するタイプの捕まえ方としては、例えば花の上にまたがってじっとしていて、獲物が安心して蜜を吸い始めるとガバッと襲いかかります。

面白いところでは、水辺で水面をトントンと叩いて、小魚が餌と勘違いして上に上がってきたところを捕まえるのもいます。

もう一つ変わったところでは、ネバネバの玉を糸の端に付けて、それを振り回して獲物に投げかけるというのもいます。

これは、その名の通り、ネゲナワグモといいます。

このようにして捕まえたら、足でしっかりと獲物を捕まえ、獲物に牙をたて、そこから唾液を注入します。

そして、その唾液で獲物の体の中が溶けていきます。

クモの食事は、これを吸うということになります。

従って、クモの食事は外見から見ただけでは、あまりよくわかりません。

最後にポイと獲物を捨てたときに、中身がなくなっています。

クモの共食い

餌は上述の通り、新鮮な生きた生き物ですが、共食いもします。

共食いに関して興味ふかい話を二つほど。

クモは、一般的に雄より雌の方が大きいです。

ある種のクモは、交尾の際に雄が雌のお腹のあたりにダイビングします。

雌は雄を食べようと毒液を注入します。

雄はすぐには死なずに、その状態で交尾します。

やがて雄は絶命、雌に食べられます。

雌は、雄を食べたことによる満腹感で性欲を減退させ、他の雄と交尾はしません。

食べられた雄は、自分が死ぬことによって、子孫を残すことができる訳です。
また、別のクモですが、雌が卵を産んだあとの話です。

産卵後、雌は孵化するまで巣の中にいて、卵を守ります。

そのうち、卵が孵化し、子グモが生まれます。

その子グモは、そばにいるお母さんを食べて大きくなります。

いずれの例も、子孫を残すためとはいえ、あまりに壮絶ですね。

クモと農業

最後に、クモの農業利用について。小屋に蜘蛛の巣3

クモを、ミツバチのように飼育して放してやるというのは難しいです。

上述の通り、生き餌しか食べないし、共食いをします。

従って、やや受動的ながらクモの活動を活かすような植物の栽培の仕方をします。

有効な方法の一つは、バンカープランツ。

クモが住みつきやすいような植物を、保護する植物の周りに植えます。

よくやるのは、クローバーとかえん麦などです。

これらにより、特定のアブラムシとか他の生き物(本命植物に悪影響を及ぼさない生き物)が寄ってきて、それを食べるクモが住みつきます。
あとは農薬の使い方にも気をつけます。

化学農薬の散布は、害虫と同時にクモも殺してしまいます。

従って、化学農薬を使うときは、空中に散布するタイプでなく、土に蒔いて植物に吸わせるタイプのものがよいということになります。

また、できれば散布する農薬は化学農薬でなく、BT剤のような生物農薬の方がよいです。

生物農薬は選択性が強く、クモは防除されにくいです。
参考にした本

小野展嗣 クモ学 東海大学出版会

浅間 茂  松本 嘉幸 石井規夫 校庭のクモ・ダニ・アブラムシ
全国農村教育協会