トマト種

寒い日が続きますね。

夏野菜を中心に作っていると、今の時期はあまりすることもないですね。

もう少ししたら、ナス科やウリ科の野菜の、種まきや育苗が始まります。

夏野菜なのに、寒い時期に発芽させて苗を育てるのは、結構大変です。

そこで、今回は種子の休眠と発芽に至るまでの様子を、夏野菜について見てみたいと思います。

種が発芽するまで

まずは、前年の秋に果実が実り、種ができます。

この時点では普通は発芽しません。

休眠しています。

秋に発芽しても、そのあとの冬の寒さで枯死してしまうためです。

この時点での休眠を一次休眠と言います。

夏に育つ植物は、一般に冬の寒さで一次休眠から覚めます。

しかし冬の寒い時期や、乾燥した時期には発芽するのは無謀ですので、発芽は起こりません。

これを環境休眠と言います。

春になって暖かくなります。

そのとき、水分やその他の条件が整えば、ようやく休眠から覚めて発芽できます。

しかし、運悪く環境が良くなければそのまま夏まで待つことになります。

夏の高温になると、また休眠し始めます。

これを二次休眠といいます。

その後、秋、冬が来て寒くなれば休眠から覚め、また発芽のチャンスを待ちます。

夏野菜の発芽までの道のりは、だいたいこんな感じになります。

逆に秋に発芽して冬に育つ野菜は、一次休眠が夏の暑さ、二次休眠が冬の寒さにより誘導されます。

では、このように発芽したり、休眠したりするのは何によってコントロールされるのでしょうか?

一つは環境、もう一つは種自身の状態によります。

環境条件と種子の発芽

ミニトマト発芽環境としては、上に述べた通り、温度と水分の影響が大きいです。

どちらも、生き物が活動する上では、極めて重要な要素ですね。

あと、酸素もそう。

酸素がなければ、呼吸してエネルギーを作り出すことができません。

いくつかの植物は、無呼吸状態でも発芽できますが、種類はそんなに多くありません。

発芽させる時に、水はけが悪い土では注意が必要ですね。

それから、光。

種の種類として、好光性種子と嫌光性種子、どちらでもない種子があります。

好光性種子は発芽に光が必要な種で、覆土を厚くしすぎると光が当たらず発芽しません。

レタス、ニンジン、春菊などが代表例です。

嫌光性種子は、その逆です。

ナス、トマト、スイカ、ダイコン等が嫌光性種子です。

自分の育てる野菜が、好光性か嫌光性か、あるいはそのどちらでもないか、事前に調べておきたいですね。

あと、光周性というのも関係することがあります。

秋に発芽する種の中には、日が短くなることにより、逆に春に発芽する種の中には、日が長くなることにより発芽するようになるというものです。

その他、例えば

・二酸化炭素が多いと発芽しやすい

・アンモニアが多いと発芽を抑える

・硝酸性窒素では逆に促進する

等々、いろんな条件があります。

ただ、水分と温度と光と通気性以外は、極端な条件でなければ、実用上はさほど気にしないくてもいいと思います。

いずれにせよ、環境面一つを取っても、とても多くの要因があります。

 

発芽する前の種の状態

環境面だけでなく、種の持つ発芽の要件も色々あります。SN3D1038

ざっと挙げると、植物ホルモンと種皮、種の中に蓄積されている養分等々となります。

これらは個々に独立しているわけではなく、互いに関連し合いながら変化し、発芽を導きます。

また、これらは環境によっても影響を受けます。

 

このうちのまず種皮ですが、これは、硬さと透水性が関係します。

硬いとそれをこじ開けて発芽するのが物理的に困難になります。

 

透水性は外の水分を中に取り込めるかどうかです。

言うまでもなく、水分が入りやすいほうが発芽しやすくなります。

 

植物ホルモンとしては、シベレリンとアブシジン酸という二種類が発芽に関与します。

シベレリンはアクセル、アブシジン酸はブレーキの働きをします。

アブシジン酸の働きの方が強いと、種皮が硬く、種子の中の水分が増えなくなります。

また、種の中に蓄えられているデンプンが分解するのを抑える働きもあります。

シベレリンは、逆に種皮を柔らかくして、吸水しやすくさせます。

ジベレリンの作用により、 アミラーゼ(澱粉を分解する酵素)を分泌して、糖質を作り出し、これが発芽のためのエネルギー源となります。

また、シベレリンは好光性の種子であれば、光を浴びていなくても、あたかも光を浴びたかのように反応し、発芽を催させます。

低温要求性の種子も同じく低温に当たったのと同様の反応をします。

発芽のコントロール

SN3D0030以上の点から、発芽を促したり、逆に長期間保管したりコントロールするにはどうすればいいか、考えてみます。

まず、発芽を促進させる方ですが、いろんな処理が提案されています。

発芽させたい種子の特徴によって、どの方法がよいか使い分ける必要はありますが、ざっと書くと以下のようなものがあります。

例えば、ハードニング。

種を濡らしたり乾燥させたりを数回繰り返す処理です。

こうすると、上述したアミラーゼの活性を高め、発芽する際のエネルギーを供給しやすくなるようです。

 

他には、低温に当てるというのもあります。

この際に、湿らせて当てることがコツです。

シベレリンを水で薄めた液に種を浸漬する方法もあります。

濃度によって発芽率が変わるので、事前にどのくらいがいいか調べておく必要があります。

種皮に傷をつける方法もあります。

傷をつけることにより吸水しやすくなります。

似たような方法で、濃硫酸処理というのもあります。

酸で種皮を柔らかくします。

ただし、やりすぎると種が全部溶けてしまうので注意が必要です。

このような処理は一つ、もしくは幾つか組み合わせることも可能です。

そして、その後種を蒔きます。

発芽には水分と酸素が必要なので、水はけと保水性のよい土がよいです。

覆土の条件は、種の種類によって正反対となります。

その種が、好光性か嫌光性かによって、調整します。

一般に、レタス、人参などは好光性種子で覆土を薄くします。

トマトや大根などは嫌光性で、厚めにします。

種子の保存のためには

た種袋以上が発芽をさせたいときですが、逆に長く保存したい時はそんなにノウハウはありません。

低温で乾燥させた状態で、きちんと密閉して酸素分の供給を抑える、ということに尽きます。

密閉しすぎて酸素がなくて死ぬのでは?と心配かもしれませんが、家庭にあるもので保存する程度の密閉ならあまり考えなくてもよいでしょう。

なお、タマネギやネギなどは短命種子で、キチンと保管してもそんなに持たないので入手した種は使い切るほうが良いでしょう。

まとめ

種はその性質によって条件が変わるものの温度、湿度、光、種皮の硬さなどが強く影響します。

事前に種の性質をよく調べてうまく保存/発芽させましょう。

 

<参考にした本>

鈴木善弘 種子生物学 東北大学出版会

吉岡俊人 清和研二 発芽生理学 文一総合出版

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