イモムシ全国的に梅雨も明けました。

昆虫は雨が苦手ですが、その雨も少なくなり、害虫がどんどん生まれてくるかもしれませんね。

防除にもっとも効果的なのは、やはり何と言っても化学農薬。

でも、今回は近年よく用いられるようになった生物農薬についてとりあげてみたいと思います。

なぜ生物農薬

病害虫や雑草の防除において、化学農薬はとても効果的です。

それなのに、なぜ新たに生物農薬を開発したり、それを好んで使用したりするのでしょう?

それは、ひとえに化学農薬の安全性に対する、不安感、不信感からではないでしょうか?

化学農薬も、以前と比べれば格段に安全になりました。

それでも、自然に存在しないような物質を使うと、思いもかけない影響があるのではないか、との疑念は消えません。

生物農薬は、いわば自然に存在する物を利用します。木々

もちろん、自然物でも人工物より危険なものはいくらでもあります。

しかし、自然の中で互いに長く調和してきた生き物を利用するのであれば、影響は小さいだろう、という考えから好まれるのではないかと思われます。

なお、自然界に存在するよいっても、外来生物を利用するのは望ましくありません。

セイタカアワダチソウやジャンボタニシなど、在来の生態系を破壊してきた生物は数多くいます(持ち込んだのは人間ですが)。

生物農薬はそういった外来生物ではなく、基本的には土着している生物を使います。

土着してひっそりと生活している生物を培養し、大量に育ててそれを放出し、他の有害生物を抑えます。

そして、しばらくすると、その放出した生物も別の生物に抑制されて、元々いたくらいの数まで減らします。

これが理想的な生物農薬と言えるでしょう。

生物農薬の利点

生物農薬を用いるメリットは、上述の通り、安全性が一番と思われますが、他にも色々あります。

・一つは、環境がよければ自ら増殖して作用します。

有害生物は、二次感染、三次感染により、長く防除の効果を受けることになります。

ただし、あまり長時間継続しすぎると、生態系に悪影響を及ぼす可能性もあります。

生物農薬を作る企業にとっても、売れなくなるので必ずしも望ましくありません。

企業の不調は、回り回って私たちユーザーにも不都合な結果をもたらします。

ウィン、ウィンの関係を築くことは重要です。

・他には、防除できる生物の範囲が狭いことも挙げられます。SN3D0284

これはデメリットでもありますが、見方を変えると防除対象以外の生物に悪影響を及ぼさず、生態系に対する害が少ないとも言えます。

・また、一旦感染してしまえば、毒性をずっと発揮し続けます。

昆虫には、免疫機能がありません。

人間だとしばらく休んだり、薬を飲むことにより健康が回復しますが、昆虫はそれがないので、直接、死につながります。

もっとも、侵入しないように体がクチクラ層という層で覆われていたり、食べた物も短期間で糞として排出するようにして害を避けるようにはできています。

・抵抗性を持った生物ができにくいという面もあります。

化学農薬だと、何度も散布していると、その農薬に耐性を持つ害虫が出てきて効かなくなることがありますが、生物農薬はそのようなことはほとんどありません。

・あと、法律的には、使用に制限が少ないことも魅力です。

化学農薬では、その農薬に応じて使用回数や濃度、収穫前までの使用日数など細かく決められていますが、生物農薬はそのような制限は比較的少ないです。

デメリット

もちろん、デメリットも色々とあります。

・まずは、効果の発現が遅いことです。

一旦感染してから、毒性が出始めるためです。

・環境の影響を受けやすいこともあります。

その生物に適した環境で使用しなければ、効かない可能性もあります。

・生物だけに、化学農薬よりも保存性が劣ります。

有効期間は、だいたい1〜3年が多いようです。

BT剤

生物農薬の中で、最も成功しているのがBT剤と思われます。

BT剤とは、バチルス・チューリンゲンシスという細菌を利用した微生物農薬です。

この細菌を最初に見つけたのは、日本人の石渡さんという人。

明治時代に、蚕の卒倒病の研究をしている時に、原因となる菌を発見しました。

一方、少し遅れてドイツの学者さんが、別の虫の中からこの菌を分離、抽出して、バチルス・チューリンゲンシスと名付けました。

これが、農薬として利用されるきっかけとなりました。

そして、試行錯誤を経て1960年ごろ、米国で農薬として登録、日本では1980年ごろから使われ始めました。

このバチルス・チューリンゲンシスという菌は、土壌中に普通に存在します。

ただし、菌株によって効きめは大きく異なります。

従って現在でも、より効き目が強く、安全な新しい菌株を見つけようと探索されています。

現在では、数10種類の薬剤が農薬登録されています。

BT剤は何に効くか

もともと、BT剤は昆虫の中の鱗翅目という、蝶や蛾の仲間に対して開発されました。アゲハチョウ幼虫抜粋

この仲間には、農業害虫がかなり多くいます。

ヨトウムシ類、コナガ、ウワバ、タバコガ、アオムシ、メイガ類、シャクトリムシ類、ハマキムシ、ケムシ類・・・

相当の害虫をカバーしていますね。

さらに、最近では他の種類にも適用範囲を広げています。

ハエや蚊、コガネムシ、さらにはセンチュウにまで効く菌が発見されています。

人間や、昆虫以外の他の生き物に対する毒性は、ないとされています。

作用の仕方

BT剤が、昆虫にどのような作用をして、防除の役割を果たしているかは詳細にはわかっていません。蛾の成虫

分かる限りで書きますと、BT剤の中にはだいたい、菌の芽胞と結晶性毒素が入っています。

芽胞というのは、ある種の菌が栄養とか温度環境の悪い条件に置かれた時に作る細胞です。

これは耐久性が高く、普通の菌が死ぬような条件でも生きながらえます。

そして、環境が良くなれば、ここから発芽して、再び細菌として活動できます。

バチルス・チューリンゲンシスの場合は、芽胞を作る時に、菌体の中に殺虫効果のある物質を作ります。

これが結晶性毒素です。

植物の葉にこれらの成分を散布しておき、虫がこれを食べます。

食べるとこの毒素がアルカリ性消化液で分解、活性化されます。

これにより腸の細胞膜に穴を開け、死に至ります。

ただし、穴が開くだけでは虫は死なず、ある特定の腸内細菌が何らか働きをするによって昆虫が死ぬようです。

このあたりのメカニズムは、十分分かっておらず、かなり複雑な過程があるらしいです。

逆に言えば、このような複雑な過程があるからこそ、特定の昆虫にだけ効いて人間とか他の生き物には無害なのかもしれませんね。

使用上の注意点

BT剤の非常に便利な点は、いわゆる化学農薬と同じように使用することができる点です。蛾の成虫

水に〇〇倍に薄めて、散布するといった方法です。

また、普通の農薬ではそればかり散布していると抵抗性を持つものが出てきて農薬が効かなくなりますが、BT剤はこのような抵抗性は少ないことも知られています。

これまでの研究結果では、コナガで抵抗性を持つものが出てくることが報告されています。

ただし、使わなくなった時には、速やかに抵抗性は失われ、また効くようになるようです。

注意点としては、昆虫が食べなければ死なないので、散布ムラには注意する必要があります。

また、石灰などを散布した直後のアルカリ性になった条件では効きにくくなります。

他には、他の薬剤でも同じですが、幼齢の幼虫の時に効かせるようにします。

防除したい害虫をよく見極め、それが対象になっている薬剤を選んで使いましょう。

<まとめ>

生物農薬は、化学農薬に比べれば一般に使い勝手が悪いし、効きにくいです。

それでもなお、環境や人に対する安全性など、いろんな魅力的な面もあります。

代表的な微生物農薬にBT剤があります。

主に、蝶や蛾の仲間に効きます。

散布ムラのないように、また防除したい害虫をよく見極めて使いましょう。

参考にした本

山田昌雄 微生物農薬 全国農村教育協会

生物農薬、フェロモンガイドブック2014 日本植物防疫協会

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