エンドウうどんこ病

先日、家の窓のサッシをふと見たら、カビが生えていました。

ショック。

冬はどうしても結露しやすいのでカビが生えやすいですね。

農業にとっても、カビの果たす役割は大きいです。

そこで今回は、カビについてです。

カビとは?

そもそも、カビとはどんな生き物でしょう?

以前にも微生物の定義について書きましたが、カビも分類学上の用ではありません。

(微生物の定義については、こちら → ウィルス、カビ、酵母 )

カビは真核生物の中の真菌類(あるいは、単に菌類)と呼ばれるグループに属します。アカパンカビ

この中で、細長くて糸のような菌糸を持っているものを指します。

ものの本などには、よく糸状菌と描かれていることがありますが、カビと糸状菌はほぼ同じ意味です。

糸状菌と呼んだ方が何となく専門家っぽく聞こえるので、以下糸状菌として話を進めます。

特徴

糸状菌は、菌糸を伸ばして成長するのが特徴です。

そして、菌糸状の所々に胞子を作ります。

空気、水、有機物、それと適度な温度が必要です。

好気性菌で、酸素がなければ生育できません。

主に土壌に住んでいて、ある程度菌糸が成長すると、生殖細胞ができて、胞子を作ります。

胞子は飛び出して、空気中に漂っています。

地上1万メートルの上空でも観察されくらいだそうです。

それが有機物の上に落ちると、発芽して菌糸が伸びます。

ちなみに、きのこもカビと同じ仲間とよく言われますね。

木や土の中で、糸状菌と同じように菌糸を張り巡らします。

傘のある、私たちが食べる部分は、植物で言えば花に相当します。

主な糸状菌

糸状菌には、いろいろな種類がありますが、以下の3つが主に私たちの周りによくいます。

1)クロカビの仲間

2)アオカビの仲間

3)コウジカビの仲間

これで、糸状菌全体の7割方を占めます。

クロカビは、よく壁などについている黒っぽいカビです。

アオカビは、お餅やパンにつく、青っぽいカビ。カビ

ブルーチーズは、チーズにアオカビを接種したものですね。

このカビから、抗生物質のペニシリンが発見されたのも有名です。

コウジカビは、麹菌として、酒や味噌などによく使われます。

強力な分解酵素を持ち、タカジアスターゼなどの製剤にも使われます。

ただし、私たちの食品で実際に使っているのは、専門業者が長い時間かけて特別に優れた個体を選別したものです。

これ以外で重要なものとしては、アカカビがあります。

別名フザリウムといえば、聞き覚えのある人も多いでしょう。

この中の幾つかの種は、植物に寄生していろんな病気を引き起こします。

一方で、これは植物ホルモンのジベレリンを作るということで利用にされています。

他には、水虫の原因菌である白癬菌も、馴染みのある人も多いでしょう。

カビと健康

日本は高温多湿なため、カビが生えやすい環境となっていることが多いです。

そして、多くのカビは、いろんな毒を持っています。

従って、カビによる健康被害もたくさんあるように思われます。

しかし、カビのついた食べ物を誤って食べて、そのカビ毒のせいで被害を受けた例はないらしいです。

食べて気分が悪くなったという人は、精神的なショックによるものだろうとのこと。

意外ですね。

ただし、カビが生えるとそれを食べるダニが増えることになります。

ダニによる被害はいろいろあるので、やはり屋内にカビを生やすことはよくないでしょう。

土壌中での役割

土壌微生物として糸状菌の果たす役割は非常に多彩です。

大きく分けて三つあります。

有機物の分解、植物との共生、植物への寄生です。

まず、有機物の分解ですが、糸状菌は難分解性のセルロース、リグニンの分解能力に優れています。

セルロースやリグニンというのは、植物の細胞壁等の骨格をなす物質です。

これを分解することにより、植物残渣に取り込まれていた窒素やリンが土壌中に放出されます。堆肥作り中に繁殖したカビ

そして、新たに成長する植物が、これを再利用できるようになります。

植物との共生については、アーバスキュラー菌根菌が有名です。

これが根に侵入するとともに、土壌中にも菌根をはりめぐらします。

菌根菌の方は、植物側から有機物をもらいます。

代わりに、水分や植物の栄養物(特にリン)を植物に供給するという共生関係を作ります。

また、宿主の植物の体内に入り込むことで、植物の生理状態を変えて、病気になりにくくする働きもあります。

アーバスキュラー菌根菌以外にも共生関係を持つ菌は多いですが、培養抽出が難しいこともあり、十分理解は進んでいません。

最後の一つが寄生です。

これは上記二つと違い、植物を病気にして弱らせたり枯らせたりします。

農地と自然環境の土壌

これらの役割は、農地と自然環境でどう異なるでしょうか。

自然環境は多様な植物が生えていて、それに応じて糸状菌も多様な種類が生息しています。

反対に、農地は単純な植生で糸状菌も単純です。

そして、糸状菌が多様に生息していると植物の根がよく発達する、種類が単純だと、植物に有害な菌が増える、と言うことが調べられています。

有害と言っても、いわゆる日和見菌的な働きです。

すなわち、通常は植物に害は与えませんが、植物が弱った時や土壌のpHなどの化学性が悪くなった時に悪影響を及ぼします。

しかしながら、農地の場合は、栄養分や水分は人間が与えるので、有機物の分解による養分供給や、共生などの有益な効果はさほど必要ありません。

もっとも、多肥、多農薬の栽培に他する反省から、低農薬、少肥にして、菌の働きをできるだけ活用しようという試みも広まってきています。

自然環境の精妙さ

上記の通り、自然環境では多様な糸状菌が生息しているわけですが、その活躍はなかなか興味深いです。

SN3D1046

この中では、寄生による植物の被害も森林を守るのに役立っています。

植物のいろんな種が発芽して成長していく時に、寄生菌により、多くの木が幼苗のうちに枯れてしまいます。

また、多くの老木も菌の寄生により倒れて、そこに空いた空間を作ります。

これらが間引きの効果となって、健全な樹林が作られるのに役立っていると言われています。

さらには、共生菌も森林全体で大きな役割を果たしています。

一つの共生菌が複数の木にまたがって共生しているのです。

そして、木々の間で光合成により生産された糖分を、共生菌を介してやり取りします。

これは同じ種類だけでなく、異なる種類の木々の間でも起こるということです。

こうしてみると、いろんな生命が寄り集まって、森林自体が一つの統合されたシステムとして機能しているようで驚かされます。

まとめ

カビは糸のような菌糸を伸ばして成長する生物。

胞子を飛ばして繁殖します。

麹菌のような、人間にとって利用価値の高い菌もいれば、フザリウムのような病害菌もいます。

カビの健康被害としては、主にカビを食べるダニが繁殖することによります。

カビ土壌中での働きは分解、寄生、共生の三つがあります。

農地では、分解や共生の影響が小さく、寄生の影響が大きくなりやすい傾向にあります。

そこで、最近は肥料を抑えめにして、分解や共生を積極的に利用する農法が徐々に増えてきています。

<参考にした本>

カビ相談センター監修 高鳥浩介・久米田裕子編 カビのはなし 朝倉書店

佐々木正実監修 カビと生活研究会編著 トコトンやさしいカビの本 B&Tブックス

日本土壌微生物学会編 新・土壌の微生物(6) 博友社

関連投稿

ウィルス・カビ・酵母

麹菌

微生物、植物の栄養と病害菌

エンドファイト