か完熟堆肥

春になり、種まきとともに畑作りも真っ最中と思います。

教科書などを見ると、よく元肥に、1平米当り堆肥2kg、石灰100g、化成肥料100gを投入、とか書いていますね。

たいていの場合、堆肥は最も多量に投入することになっています。

堆肥は野菜作りには最も重要な資材のうちの一つです。

しかし、堆肥といっても、原料から作り方から色々あります。

スペックもそれぞれ違います。

売っている堆肥の袋のスペックを見ると、窒素、リン酸、カリの主要肥料成分とともにC/N比が記載されているものが多いです。

まずはC/N比について少し説明してみましょう。

C/N比とは

C/N比とは、ある素材、ここでは堆肥に含まれる炭素と窒素の成分濃度の比率です。(モル比ではなく重量比)

例えば、堆肥1kg中に炭素分が300g,窒素分が20g含まれていたらC/N比は300/20=15となります。

堆肥の適正なC/N比は15〜20くらいとされています。

C/N比が高くなりすぎると、微生物が有機物をたくさん食べて微生物が激しく繁殖します。

しかし窒素も、微生物にとって体を作るために大量に必要です。

そこで、微生物は窒素が足りないので、土壌中から取り込みます。

その結果、土壌中の窒素が少なくなり、植物が取り入れる分がなくなります。

いわゆる、窒素飢餓と呼ばれる現象です。

C/N比が逆に低すぎる場合は、堆肥というよりも窒素肥料としての働きが強まります。

堆肥は、本来は土の状態を改善するために用いられるもので、肥料とは少し意味が異なります。

そのため、本来の意味の肥料、例えば化学肥料や油カスなどの有機質肥料と一緒に用いられることが多いです。

その結果、もしC/N比が低い堆肥と肥料を併用すると、窒素過剰になる可能性もあります。

ただし、細かく言えば、C/N比だけで決まるわけではありません。

堆肥を作る原料によって、上記の範囲は変わってきます。

例えば、紙パルプのようなセルロースの多い素材を用いると、微生物の分解が急激に進みます。

その結果、C/N比が20でも窒素飢餓が生じることがあります。

逆に、パーク堆肥などリグニンが多い素材では、微生物が分解できないのでC/N比が高くても窒素が効きやすくなります。

とはいえ、いずれにしても、C/N比は特定の範囲内に納める必要があります。

C/N比の調節方法

このように堆肥のC/N比を調節するためには、元の原料のC/N比を調節します。

堆肥の原料はもっとC/N比が高くなっています。

例えば、藁であればC/N比が70くらい。

これを発酵させる過程で、C/N比は下がっていきます。

原料を微生物が食べて、炭素の一部は呼吸により二酸化炭素として大気に放出するため、濃度が低くなります。

一方、窒素はタンパク質を作るための必須成分であり、微生物自身の体作りに使われます、

従って、ガスや水に溶けて抜ける分はさほど多くありません。

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その結果、C/N比が低下します。

従って、堆肥を作るときにはC/N比を2割〜3割高いくらいにしておきます。

C/N比が高すぎる場合(40以上)は、化成肥料とかの窒素肥料を足すようにしましょう。

それにより、堆肥化も早まります。

つまり、C/N比が高いということは、材料の堆肥化が十分でなく未熟だということになります。

堆肥の熟度

堆肥を使用するにあたって、どのくらいの熟度になっているか知ることはとても重要です。完熟堆肥と未熟堆肥

未熟な堆肥を使用すると、色々な不都合があります。

上述の窒素飢餓はその一例です。

C/N比が高すぎて微生物が繁殖する過程で、土壌中の窒素を奪うことによって起こります。

同様に、土壌中の酸素を微生物が消費して植物が利用できなくなることによる酸欠、

有機物の分解によって生じる、アンモニアや亜硝酸などの有害ガスの影響も懸念されます。

また、材料中には植物の生育に有害な成分、例えばフェノール性物質や低級脂肪酸が含まれていますが、これらは堆肥化の過程で分解されて
無害になります。

しかし、未熟堆肥では分解し残っていて、植物の生育を抑えることにもなりかねません。

病害虫や雑草の種など、有害生物も問題となります。

腐熟が十分行われていれば、発熱により上記の有害生物は死滅しますが、不十分であれば生き残ってしまいます。

さらに、生き残るだけではなく、未熟堆肥の場合は害虫が利用しやすい有機分が残っているため、害虫を集めてしまうことにもなりかねません。

以上のような様々な理由で、未熟堆肥の使用は避けた方が無難です。

もしも、どうしても使いたい場合は、作物を植えるよりもだいぶ前に投入して、土の中で腐熟するのを待つようにしましょう。

待つ期間は季節にもよりますが、だいたい一ヶ月くらいは見ておきたいものです。

熟度の見分け方

それでは未熟堆肥かどうかを見分けるにはどうすれば?という疑問が当然生じますね。

堆肥の熟度を調べる方法は色々とあるのですが、ここでは専門の道具がない人でも手軽にわかる方法について紹介したいと思います。

一言でいえば、人間の五感を駆使する方法です。

一つは、匂い。

アンモニアの刺激臭がすると未熟です。

完熟すると堆肥特有のすえたような匂いです。

言葉では説明しにくいですが、実際に匂ってみればわかると思います。

決して不快なにおいではありません。

触覚も大事です。

完熟になると、元の素材特有の手触りが消えて、ポロポロと崩れやすくなります。

余談ながら、世界中の民族の中でも触覚の鋭さは日本人とフランス人が双璧だそうですので、自信を持って触ってみましょう。

視覚面では、見た目素材の形が残っているか、色が黒っぽくなっているか等です。

あと、残った感覚としては味覚と聴覚ですが、味覚を使う勇気がある人は、なめてみて下さい。

私はやったことはないので、どんな味がするのか知りませんが。

これらの五感を駆使する方法以外では、やはり実際に使ってみるのが確実ですね。

小松菜か何か、生育の早い野菜を使って発芽試験してみましょう。

土と堆肥を混ぜて育てます。

比率は、土500ccに堆肥5gくらい、好ましくは堆肥の濃度を変えて何種類か作ってみます。

しっかり育てばOKです。

局所施用

熟度を確認した後は、いよいよ使い方についてです。

今回は、特に局所施用をお勧めしたいと思います。

教科書などによく書いてある「畑全面に、平米当たり1kgとか2kgとかの所定量を投入して耕耘する」というのは、全面施用が前提となっています。

これは、畑全体の土壌の保全、改善のためです。

畑の有機物は微生物により分解、消耗されるので、その分を補給するという考え方です。

このような全面施用をするのは、機械を使わなければ大変です。

使用量が多いので、運搬も容易ではありません。

堆肥を買うとすれば、コストもかかります。

過剰に投入すると、堆肥中の肥料分が雨などで溶脱して川に流れ込み、水を汚染することにもなりかねません。

また、作物を植えないところにも施用されるので雑草も生えやすい欠点も考えられます。

そもそも、畑の有機物がどのくらい消耗されるのか知ることは容易ではありません。

収穫残渣のすき込みとか、敷き藁とか、色んな有機物の補給もあるでしょうから、実際のところそこまで有機物が消耗していない可能性もあります。

これらの問題点から、堆肥を局所施用することが考えられます。

作物を植えるところだけに撒こうという考えです。

局所施用は色んなバリエーションがあります。

例えば植え穴に施用するか、溝を線状に掘ってそこに施用するか、

あるいは堆肥を投入した後土をかぶせるか、堆肥を投入した後土と混ぜるか、

作物を植える場所の真下に堆肥を投入するか、横のずらした位置に投入するか

さらには定植時に根鉢をくるんだり、定植後に表面にマルチしたり、

等々です。

局所施用は何と言っても量が少なくて済むので、作業が楽です。

ただし、これは狭い面積の場合で、大規模な農地ですと機械で一気に全面施用する方が簡単です。

また、局所施用はトマトやナスなどの、大株で長い期間育てるものに適しています。

春菊やほうれん草など、生育期間が短くて小さな株をたくさん作る場合は、そんなに効果は感じられないかもしれません。

ちなみに、私は植え穴の底に堆肥と化学肥料を混ぜて入れ、肥当たりしないように土を少しかぶせた後に苗を植えます。

そして、その上に堆肥をマルチします。

効果については、実感しています。

畑を始めて最初の頃は、途中で生育が悪くてなかなかうまくいかなかったのですが、この方法を取り始めてようやく曲がりなりにもまともな収穫ができるようになりました。

とくに堆肥のマルチングが、効果的でした。堆肥マルチ

乾燥を防ぐ働きもありますし、土の表面が発酵によりフカフカになっている感じがします。

雑草の防除にもなり、なかなかいい塩梅です。

マルチの厚さは、教科書をみると1〜3センチとか書いていますが、それより少なくてても少ないなりに効果はあるようです。

局所施用の注意点として、未熟堆肥を使う場合は、植物の根や軸に直接当たらないようにすること。

前に述べた通りですね

肥当たりしないような成分で完熟した堆肥だったら、大丈夫です。

また、植え穴を掘ったところで 堆肥と土を混ぜて施用しても良いです。

面積が広い場合は、植え穴を一つ一つ掘るのは大変ですので、溝状施用の方がいいかもしれませんね。

これなら半分機械的にできるためまだしもやりやすそうです。

自分と植物の都合に合わせて行うのが良いかと思います。

<参考にした本>

西尾道徳 堆肥・有機質肥料の基礎知識 農文協

農文協編 堆肥とことん活用読本 農文協

小祝政明 有機栽培の基礎と実際 農文協

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