畑で農作業していると、いろんな生き物に出会います。

昆虫やカエル、その他の土壌動物など。

土壌動物については、私たちは必ずしも十分な知識を持っていませんが他の生き物を捕食するものも、結構います。

いわゆる天敵ですね。

今回は天敵について、植物栽培への利用の面から考えてみたいと思います。

日本の天敵利用の制度的特徴

ヨーロッパでは、ホームセンターなどで天敵の箱が売られているそうです。

この中にはハガキが入っていて、それを投函すると天敵が送られてくるとのことです。

非常にお手軽に、天敵が利用できるようになっているのですね。

一方で日本は?というと、かなり遅れているのが実情です。

気候や風土の面、あるいは日本人のこだわりといった性格面もありますが、別の特殊事情もあります。

というのは、日本では、天敵は農薬取締法で農薬扱いとなって規制されているためです。

農薬取り締り法では、農薬を売ってもよろしいと、登録してもらうのが大変厳しいです。

したがって、特に天敵については、登録数が少なくなっているのが実情です。

その結果、天敵を購入して利用しずらい状況となっています。

ただし、同じ県内から採取した土着天敵は法律上は例外となります。

これは、特定農薬として取り扱われるためです。

特定農薬は、効果と安全性が確かであるため、使っても良いとのお墨付きをもらっているのです。(大きなお世話、という気もしますが)

そこで、土着天敵をいかに利用するかがポイントとなります。

どんな天敵がいるか

天敵というと、クモがチョウを食べるとか、カエルがヘビににらまれるとか、カマキリがバッタを捕まえるとか、いろんなイメージがありますね。

ヘビはちょっと、という気はしますが、農業利用できる天敵は色々います。

上記のような、分かりやすく補食してくれる生き物ももちろんですが、寄生する天敵も非常に重要です。

寄生する天敵としては、ヒメコバチとかツヤコバチなどのハチ類が有名です。

これらは、卵を害虫の幼虫の体内に産卵したり、害虫の幼虫の近くに産卵したりして、その幼虫を食べます。

また、微生物の天敵などもいます。

バチルスチューリンゲンシスという菌は、チョウやハエの毒素を作って、殺虫します。

これらは、いずれも農薬として市販されています。

この他、鳥とか猫とかも害虫の天敵と言えるでしょうね。

天敵の中には、不特定多数の虫をなんでも食べる種類と、特定種のみ捕食するタイプがいます。

不特定多数の虫をなんでも食べるタイプは、害虫防除としては、余り効果的でないとされています。

特定種のみ捕食するタイプは効率良いですが、効率が良すぎて、生態系のバランスが崩れる心配があります。

ただし、これは自然の中での話であって、農地とか人為的に特定の植物のみ育てている場所では問題ないですね。

天敵を利用する上で、その天敵が効率がよいかどうかは移動能力が主に関与します。

遠くまで移動できるものは、逃げてしまう為、そんなに効果がありません。

テントウムシとか、アブとか、飛んでいってしまう虫がこれに当たります。

クモも、バルーニングといって糸を垂らして、風に乗って飛んでいくタイプはやはり移動能力が高くなります。

移動能力が低いものは、効果は高いです。

ハネカクシ、ゴミムシといった土壌動物がこれに当たります。

テントウムシは、成虫は飛んで行ってしまって効果があまりありませんが、幼虫は頼れる戦力となります。

また、クモも、コモリグモのような飛ばないタイプは頼りになります。

ただし、これらあまり移動しない天敵は、餌がない状態になったときに数を減らしてしまいます。

というくことで、移動能力が中くらいのものが最もよいです。

該当する天敵としては、クサカゲロウ、寄生蜂、捕食性のカメムシなどです。

天敵の効果的な利用法

天敵利用は、どうしてもハウスが主で、露地では十分な効果が得られていません。

上述のように、逃げていくことが多いためです。

従って、露地でのポイントは、いかに土着天敵がその圃場に留まってくれるかとなります。

そのために、彼らに住みよい住環境を提供することが重要です。

さらにそのためには、輪作とか、作付けパタンを工夫すること、害虫の抵抗性品種との混作をすることなどが有効です。

敷き藁などの、マルチをすることも天敵の住処をつくって有効です。

あと、バンカー植物とか、インセクタリー植物と呼ばれる植物を植えることも行われます。

有名なのは、ナスのソルゴーまきで、ナスを植えている周りを取り囲むようにソルゴーを植えます。

すると、そこにヒエノアブラムシという、無害なアブラムシが住みます。

そして、これを餌にして、テントウムシ、ヒラタアブ、クサカゲロウ、ヒメハナカメムシといった天敵生物が寄ってきて、中のナスの害虫も食べてくれます。

クローバーもよいバンカー植物となります。

捕食性のゴミムシが住み着きます。

天敵先進地域のヨーロッパでは、畑の周りに保全緩衝帯を作り、そこで、数種類のイネ科雑草を混植するようです。

十分な土地の面積があれば、やってみてもよいかもしれませんね。

農薬との併用

天敵だけで、無農薬で栽培できればそれに越したことはありませんが、なかなかそうもいきません。

上述のような工夫をしても、それだけではやはり害虫に食べられてしまうでしょう。

かといって、何も考えずに農薬を使うと、天敵まで死んでしまいます。

下手をすると、その農薬に抵抗性を持つ害虫が出てきて、天敵のみ死んで害虫の楽園となることにも。

このような現象を、リサージェンスといいます。

現実的なのは、天敵を活用しつつ、農薬の使用回数をできるだけ減らすことです。

かつ、農薬の散布の方法も工夫することです。

農薬は、根から浸透させて効果を出すタイプの農薬を使用します。

これにより、地上に住む天敵への悪影響を抑えます。

また、地上で散布する農薬も、散布の仕方を工夫します。

植物全体には撒かず、害虫が出る部位、葉の裏や先端の芽の部分に重点的に撒くようにします。

あとは、選択性の殺虫剤を使用します。

これにより、狙った害虫以外に被害が及びにくくします。

まとめ

天敵は、うまく使えば、農薬を使用する回数を減らせ、環境にもやさし栽培方法となります。

天敵をうまく利用するためには、輪作とか、バンカー植物の利用などで天敵に住みよい住環境を作って上げます。

その上で農薬の使用回数を減らしたり、使用方法を工夫したりして、天敵が減らない工夫をすることが大切です。

それぞれの天敵の特徴をよく理解し、効率よく働いてもらえるように環境を整えてあげましょう。

参考にした本

根本久 和田哲夫 天敵利用の基礎と実際 農文協

根本久 和田哲夫 天敵ウォッチング NHK出版

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