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当地では、昨日より梅雨になりました。

人間にとっては蒸し暑く不快ですが、植物にとっては、ぐんぐん成長する季節ですね。

成長するためには、肥料成分の吸収が欠かせません。

特に重要なのが窒素。

そこで、今回は窒素についてです。

窒素の重要性

植物に限らず、動物や微生物、いずれの生き物も体はタンパク質でできています。

そして、タンパク質はたくさんのアミノ酸が繋がったものです。

アミノ酸を構成する元素は炭素、酸素、水素、そして窒素です。
(アミノ酸の種類によっては硫黄も含みます)

炭素は光合成で、水素は水の吸収で、酸素は呼吸やその他もろもろで取り込みますので、肥料成分として最もたくさん必要なのは窒素ということになります。

ちなみに、植物を乾燥させて成分を分析したときの含有量としては、

窒素:3%
リン酸:0.23%
カリウム:1.4%
カルシウム:1.8%
マグネシウム:0.3%
硫黄:0.3%

となりますが、これに対して、土壌中は

窒素:0.1%
リン酸:0.07%
カリウム:1.4%
カルシウム:1.4%
マグネシウム:0.5%
硫黄:0.07%

程度になります。

含有量は地域により違うでしょうし、成分により土壌中に含まれていてもいろんな形態で存在しているので単純に比較することはできませんが、それでも窒素は土壌中に含まれるよりも何十倍も必要であることがわかるかと思います。

従って、その分の窒素を補ってやる必要があります。

様々な窒素肥料

肥料には有機肥料、化学肥料、各種ありますが、窒素の形態からは、大きく次の四つに分かれます

個々について述べますと、

1) アンモニア態(NH4+イオン)

硫安とか塩安とか安の字のつくものがそうです。

硝安も一部はアンモニア態です。

堆肥とか有機質肥料も、分類するとすればアンモニア態です。

これらは、もともとはタンパク質やアミノ酸の形で存在しているので、一部はアミノ酸そのものとして吸収されますが、大部分は分解されてアンモニア態となるためです。

アンモニア態窒素は、そのままアンモニアとして植物に吸収される場合もありますし、土壌中の菌により硝酸イオンとなってから吸収される場合もあります。

使用の際の注意としては、石灰と一緒に使用すると、アンモニアガスを発生するため、人間の体に悪く、肥料の効きも悪くなります。

主だった肥料について述べますと、まず硫安の特徴としては土を酸性化する働きがあります。

肥効は即効的です。

また、窒素以外に硫黄も供給することができます。

硝安の特徴は、硝酸態窒素とアンモニア態窒素の両方を含んでいることです。

やはり即効的です。

水田などでは硝酸分が水で流れてしまうので、その分効きにくくなります。

2) 硝酸態(NO3ーイオン)

硝安とか、硝石とか硝の字のつくものです。

これらはいずれも即効的です。

硝安と同じく、硝酸イオンは土壌中の粒子にくっつきにくいので、降雨などで、簡単に流れてしまいます。

逆に言えば、水に溶けやすいので、液肥として使用することもできます。

ちなみに硝酸態窒素肥料として硝石やチリ硝石がありますが、硝石はカリウムイオン、チリ硝石はナトリウムイオンとくっついたもので、これらは別の 物質です。

3) 尿素態((NH2)2CO )

尿素とか、動物(含人間)の尿がこれに当たります。

尿素態は、土壌中の微生物の働きで、一旦分解されてアンモニア態に変わります。

夏は4〜5日、冬だと10日程度かかりますので、そのかかる時間だけやや肥効が遅くなります。

アンモニア態に変わったあとは、他のアンモニア態の肥料と同じです。

尿素も水に溶けやすいので、液肥として使われます。

むしろ硝酸態と比べて非イオン性で浸透性が良いので、液肥としてはより優れています。

4)シアナミド態(CN2)

石灰窒素がこれに当たります。

肥効は遅めです。

シアナミド態の最も大きな特徴は、防虫や雑草防除、微生物の活動よを抑制するなどの効果があることです。

その代わり、他の化学肥料よりも価格が高いという問題があります

これは土壌に撒きますと、シアナミド態から尿素態、アンモニア態、硝酸態と変化していきます。

窒素の吸収過程

上記の通り、様々な種類の窒素肥料がありますが、せっかくまいても、吸収してくれなければ意味がありません。

植物が吸収しないと、せっかくの労力が無駄になるだけでなく、いずれは肥料成分は川から海に流れ込んで、環境汚染の原因にもなります。

そこで、次に植物が窒素を吸収するに当たって、どんなことに気をつけるべきか見てみましょう。

その前に、まずは植物が窒素をどのように吸収するかについて。肥料吸収の仕組み1

土壌中に撒かれたチッソ肥料は、まずは水に溶けます。

溶けなければ、吸収することはできません。

水とともに、窒素分は根から吸収されます。

吸収する機構はいろいろですが、主に能動輸送という形式で吸収されます。

受動的な、例えばティッシュに水がしみこんでいくように根の中への浸透するのは起こりにくいです。

と言うのは、土壌中よりも植物体内のほうが窒素濃度が低いためです。

濃度が低い方から高い方に移動するのは、物理的な流れに逆行しているので、それを起こすためには特別な何かが必要です。肥料吸収の仕組み2

この場合は、植物がエネルギーを使って窒素を取り込んでいます。

人間が、自分の持つ体力を使って、食物を手に取ったり口に入れてモグモグ噛んだりして体内に取り込むのと同じようなものです。

このために必要なのは、体に蓄えた養分と、それをエネルギーに変えるために必要な酸素と言うことになります。

窒素を植物が吸収する要因

上記を踏まえて、窒素を吸収する要因について見ていきましょう。

・水

上述の通り、肥料分が一旦水に溶けなければ吸収できません。

従って、十分な水分を供給することは、必須となります。

・酸素

体内の養分をエネルギーに変え、肥料分を取り込みます。

そのために根が呼吸しなければならず、酸素が必要となります。

水分を供給するのは必須ですが、あまりに水浸しになると土の中の空気がなくなってしまい、酸素が取り込めなくなってよくありません。

・温度

酸素と同様、温度がある程度高くないと、植物の活動が不活発となってエネルギーが造りだせません。

・光

光合成して植物体内で養分を作り出し、新たに窒素分を吸収するエネルギーが造りだせません。

・pH

pHは土壌の酸性、アルカリ性を示す指標です。

土壌が酸性に偏りすぎる(pHが低い)と、アンモニアを硝酸に変える微生物の働きが弱まります。

硝酸イオンの好きな植物にとっては、窒素を吸収しにくくなります

アルカリ性に偏りすぎる(pHが高い)と、アンモニウムイオンが土壌中に保持されにくくなり、水で容易に流れてしまって、やはり窒素が吸収しにくくなります。

他の成分の吸収も勘案すると、弱酸性pH6.5〜7くらいの弱酸性が良いとされています。

・拮抗現象

土壌中のいろんな成分が、植物の窒素吸収に影響を及ぼすことが知られています。

例えば、カルシウムが多量に施用されると、アンモニウムイオンが吸収しにくくなるとよく言われます。

この他、マグネシウム、リン酸、銅など、各種養分と窒素吸収との関係が調べられています。

ただし、調査結果は様々で、反対の記述もあります。
(例えばリン酸が少ないと窒素吸収しやすいとか、逆にリン酸がある程度なければ窒素吸収しにくいとか)

これらの関係はいろいろと複雑で、メカニズムもよくわかっていないようです。

ただ、一つ言えるのは、ある成分が過剰にあると別の何らかの成分が吸収しにくい場合が多いようです。

まとめ

植物の体を作るのに最も大切な肥料成分として、チッソがあります。

窒素肥料は、チッソの形態によって、大きくアンモニア態、硝酸態、尿素態、シアナミド態の四種類に分かれます。エゴマ畑

それぞれの特徴に応じて使い分けましょう。

窒素をうまく吸収させるには、水分と空気が適度に含まれるということで、団粒構造の発達した土壌が良いということになります。

また、肥料分が水により流亡せずに、土壌中に保持されるということで、土壌有機物をしっかり投入して腐植分の多い土壌を作ることも必要です。

さらに光にしっかり当てて、肥料分はバランスよく与える、という月並みな結論になってしまいます。

こうして考えてみると、農業技術に王道なし、当たり前の管理を愚直に続ける、というのが必要なのでしょうね。

<参考にした本>

米山忠克 長谷川功 関本均 牧野周 間藤徹 河合成直 森田明雄 新植物栄養・肥料学 朝倉書店

E.J.ヒュイット T.A.スミス (鈴木米三訳) 植物の無機栄養 理工学社

<関連投稿>

尿素(栽培技術、農業資材)