徒長エゴマ

今の時期は、いろんな野菜を育苗したり植え付けたりしてどんどん大きくなっていることと思いす。

発芽したばかりの幼苗が、だんだんと成長していくのを見るのは、嬉しいものです。

その反面、色々と手がかかることもあり、結構気を使います。

あるいは、私のようにあまり気を使わない人は、苗をダメにしてしまうことも多々あるでしょう。

育苗の失敗で最も多いのは、徒長ではないでしょうか?

そこで今回は、正常な成長と徒長について、考えてみたいと思います。

正常な生長

徒長の前に、まずは正常な生長とはどんなものか見てみましょう。

植物に限らず、その生き物の大きさは、ざっくり言えば

細胞の数×細胞の大きさ細胞

で表されます。

その中で、私たち動物は、主に細胞の数が増えることにより大きくなります。

植物の場合は、これに対して細胞が大きくなることにより大きくなります。

膨圧

細胞が大きくなるといっても、植物の細胞は硬い細胞壁で覆われています。

従って、細胞が大きくなるためには、まずは中から圧力をかけて細胞壁を押すこと、
それとともに、細胞壁が柔らかくなって広がりやすくなることが必要となります。

このうちの、まず細胞壁を広げる圧力とは、膨圧というものです。

細胞の中に、糖分とかミネラル分とかがたくさん溶けていると、浸透圧という現象により、細胞の外から中に水分が入ってきます。

それにより、細胞がパンパンに膨らみます。

これが膨圧です。

健康な苗は、よく光合成したり、根から養分を吸収する力が強いので、細胞内のこれらの濃度が高くなり膨圧が高くなりやすいです。

それとともに、植物ホルモンの働きにより、細胞内の養分をさらに高めて膨圧を高める作用もあります。

細胞壁の緩み

単に膨圧が高くなるだけであれば、細胞は大きくなっても、大きくなる方向が定まりません。

ジャガイモのように、丸っこく大きくなるのであればそれでもいいですが、茎葉のような一定の形を保って大きくなるには生長する方向も大事です。

これをコントロールするのが、細胞壁のゆるみです。

細胞壁の主成分はセルロースでできています。

このセルロースは繊維状で、束になっています。

細胞壁が緩むというのは、この繊維と繊維の間隔が広がることに他なりません。

もしもこの繊維がタテ方向に伸びていれば、繊維の間隔が広がることにより、横方向に細胞壁が伸びることになります。

逆に横方向に繊維が伸びていれば、細胞壁は縦方向に広がります。

縦横バラバラであれば、丸く生長することになります。

これにより、細胞の成長方向が定まります。

では、この繊維の方向は何によって決まるかというと、やはり植物ホルモンの働きが大きいようです。

以上を踏まえて、それでは徒長はどんなものか見て行きましょう。

徒長とは

そもそも徒長とは、植物がひょろひょろと背が高く間伸びして成長したものをいいます。

正常な成長と違って、茎は細長く葉も発達しません。

このような状態になると、病気になりやすくなる上、温度変化やちょっとした水のやりすぎ、乾燥などの環境の変化にも弱くなります。

徒長と光

徒長する最も大きな要因は光です。

植物に光が十分当たらないと光合成ができませんので、光を求めて上に伸びることになります。

モヤシやカイワレ大根は、徒長の極端な例ですね。かいわれ大根

最初に述べた通り、細胞内の成長の際には、細胞の中に溶けている糖分やミネラルなどの濃度が高まって、浸透圧が高まることにより起こります。

ところが、徒長の場合、光合成で成長に見合うだけの糖分を作り出すことができません

そのため、軟弱となりやすいのです。

また、光は量だけでなく、質も重要です。

遠赤色光と言われる光が少ないと、徒長しやすくなります。

これ以外に、紫外線の一部も徒長を抑える働きがあります(紫外線には何種類かあります)。

白色蛍光灯などは、遠赤色光がカットされているので、このような状況で育苗する場合は注意が必要です。

まわりの植物の影響

光に関連しますが、その植物のまわりに他の植物が密植されていると徒長しやすくなります。

まわりの植物の茎葉で光が遮られるため、これを避けるために高くなろうとするためです。

また、それだけではなく、アレロパシーの影響も考えられます。

アレロパシーというのは、根や他の部分から相手の植物の生育を抑える物質を出すことです。

これにより、根の発達が抑えられて養分が供給できにくくなると思われます。

温度の影響

光以外には、温度も重要です。

これに関しては、DIFという指標があります。

昼間の温度と夜の温度の差を取ったものです。

DIFが高い、つまり昼の温度が高くて、夜の温度が低いと徒長しやすくなります。

昼間に光合成で糖分を作り、夜にその糖分が植物の体の各部に流れて成長します。

温度がある程度低い方が、糖分が流れやすくなるようです。

この他には、高温とか過湿とか肥料過多が徒長しやすいとかいろいろ言われます。

ただし、これらは直接的な徒長の原因ではなさそうです。

植物がこういった環境で十分健康に成長できなくなると、養分が十分取り入れられなくなり、徒長しやすくなるという可能性はあります。

では徒長を抑えるには?

以上述べたことから、徒長を抑える方法はいくつか考えられます。

すなわち、徒長を抑えるためには、

・十分な光を与えるハクサイ畑
・温度差をつけない
・植える間隔を広げて疎植する

ことなどが有効と考えられます。

また、これ以外では植物ホルモンの影響も大きいです。

植物ホルモンの中では、ジベレリンという物資に成長促進する効果があります

これにより、徒長もしやすくなります。

この働きを抑えるための薬剤で矮化剤というのがあり、これを用いることによりジベレリンの効果を抑えて徒長を抑えることができます。

薬剤を使いたくない場合は、成長を抑制する植物ホルモンを利用することが考えられます。

該当するのは、エチレンです。

これは成長を抑制し、徒長もしにくくする働きがあります。

このエチレンは、物理的に植物が力を受けると出てきます。

一番簡単なのは、軽くなでることです。

植物も幼児と同じで、なでることが大切なのですね。

まとめ

徒長とは、植物がヒョロヒョロと背が高く伸びていく現象です。

光、温度、植物ホルモンなど、様々な要因があります。

健康に育てるために、これらの環境を整えて、徒長を抑えるようにしましょう。

<参考にした本>

A.W.ゴールストン、P.J.デービス 植物の成長制御 丸善

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