えひめAIの散布後の菌たち

栽培技術

SN3D0647私が最もよく使う資材は米ぬかとえひめAIです。

これまで幾つかの資材を試したましたが、その中でもえひめAIはよく効くと実感しています。

定期的に使うことにより、病害虫からの防除や植物の生育が促進されます。

使い方としては、普通は植物に直接かけたり土壌に潅注します。

ただし、えひめAIに限らず微生物資材を圃場に投入しても長い間定着することはまずありません。

今回は、このあたりについて詳しく見てみたいと思います。

散布前の土の住民たち

そもそも、土壌には多種多様な菌がいます。

そしてまた、土壌は微生物にとっては栄養がほとんどない状態となっています。

従って、エサがなくて多くの菌は休眠しています。

そこに、たまに植物残渣とか根から出す栄養分とかが供給されると、土壌の微生物は活発に活動することができます。

ところで、多くの菌には相手の菌の生育を阻害する拮抗作用もあれば、生育を助け合う相互扶助の作用があります。

例えば、青カビはペニシリンという抗生物質を出し、他の菌の生育を抑えています。

他に、麹菌や放線菌なども抗生物質を出すことで有名です。

一方で、麹菌は強力な分解酵素を放出していろんな栄養分を他の菌も利用できる形に変えます。

多様な菌がこういった様々な活動を行うことにより、一部の菌は姿を消し、他の一部の菌は生きのこります。

フハイカビとか疫病菌等の有害菌は、有機物を投入して多様な菌が繁殖しやすい状況にすると、競争に負けていなくなることが知られています。

そのような過程で、結果としてできているのが今の畑の微生物相です。

つまり、そこにいる微生物たちは、その畑の環境に馴染んで生き残っている訳です。

えひめAIの散布後

そこにえひめAIを撒きます。

えひめAIには、様々な有効成分が含まれています。

各種ビタミンやアミノ酸等々。

これらは、多くの土着菌のエサにもなって土着菌の繁殖を促します。

一方で、成長を阻害する物質も含まれています。

各種有機酸や、タンパク質分解酵素等々。

これらにより、一部の菌は成長を阻害されますが、別の一部の菌はさほど影響を受けず、エサの効果の方が勝って繁殖が促進します。

さらに、これらの土着菌は、生育条件がその畑の状況・・・気象条件や土壌の性質等に適応して生き延びた菌です。

従って、えひめAIの菌よりも環境に適応して成長しやすいです。

結果として、えひめAIの菌が侵入しようとしても土着菌との競争に負けてしまうことになります。

えひめAIの死後の世界

しかし、えひめAIの菌が生き残らなくても、それらの死骸は多くの土着菌のエサとなります。

そして多くの土着菌が活性になることにより、上述のような病害菌が死滅する効果も期待できます。

もちろん、えひめAIの有用成分は植物自体も利用できます。

えひめAIの効果は、むしろこういった点が本質的と考えられます。

菌を長生きさせることも良いですが、それよりも培養段階をしっかりと行い、十分発酵させて有効成分を作り出すことが重要です。

それでも長生きさせたい

とはいえ、自分が手塩をかけて育てた我が菌、長効きさせたいと思うのも人情です。

そこで、少しでも長くえひめAI菌を圃場で生存させる方法について、考えてみたいと思います。

まず前述の通り、土の中には、土着の微生物が多数います。

従って、土の中での競争に勝つためには、土着菌に負けないくらい、多量のえひめAIを投入しなければなりません。

しかし、畑全体にそうするのは現実的ではありません。

そこで、植物の周りだけ、このような状態を作ることが考えられます。

具体的には、ポットで育苗するときにえひめAIを多量に散布して、ポット内の土の微生物をえひめAIで優勢にさせます。

一般に、育苗用土は微生物は少ないですし、例え沢山いたとしても量が少ないので、勢力を逆転させるのは容易です。

あるいは、事前に日光に当てるなどして、土壌消毒して使うこともできます。

そしてそのようにして育苗し、畑に定植すれば、ポットの用土内のえひめAIの菌が根の周りにうようよいて、菌が長持ちすることが期待できます。

注意

ただし、種が発芽する前からえひめAIを使うと良くないかもしれません。

原因はよくわかりませんが、以前やってみたら失敗しました。

カイワレ大根を作ろうと思ってコップに脱脂綿を敷き、そこにえひめAIを混ぜた水で湿らせて種を蒔いてみました。

その結果、単なる水だけを使ったものに比べ、発芽率が著しく低下してしまいました。カイワレ大根えひめai

浸透圧により、種が吸水しにくくなったせいかもしれません。

従って、発芽してある程度の大きさになってから、希釈倍率も100倍くらいに抑えて灌注するくらいが適当ではないかと思います。

私も現在試行錯誤して、良い条件を調べているところです。

※ 追記

上記の通り書いたものの、見返してみると、育苗段階でえひめAIを大量に用いることはよくないと思われます。
根拠としては、pHが低すぎるためです。

えひめAIのpHが3として、これをカボチャの栽培に適したpHの6程度まで薄めるとすれば、
少なめに見積もっても100万倍程度まで希釈しなければならない勘定となります。

しかし、そこまで薄めると肝心のえひめaiの自体の効果がほとんどないと思われます。

(ただし、pHの計算に必要な乳酸の電離定数の濃度依存性の数値が調べても出てこなかったため、実際はここまで薄める必要はないかもしれません)

あるいは、えひめaiを石灰か何かと混ぜて中和させた液を使うことも考えられますが、石灰を入れすぎると乳酸菌や酵母菌は死滅するので、きちんとpHを計りながら注意深く行う必要があります。

それに、石灰と併用した時にどのような効果があるのかは試して見ないとなんとも言えません。

この投稿を見ていただいた方から、ドブ付けはどうかとのご質問をいただきましたが、同様の理由でやはりしない方が良いように思います。

菌を定着させる

もう一つの方法は、一旦固形分の資材に定着させて、それを畑にまくことも考えられます。

定着させる資材としては、籾殻とかパーミキュライトとかが良いようです。

普通に考えると、米ぬかとか油粕とか、菌のエサになるものが良さそうですが、これらは、他の菌にとっても格好のエサとなります。

例え、えひめAIの菌がうまく繁殖したとしても、時間が経つと、他の菌が優勢に遷移していく可能性があります。

これに対し、籾殻やパーミキュライトではエサとなる養分があまりありません。

従って、他の菌は侵入しにくいので、えひめAIの菌が長く定着する住処となることができます。

栄養分は少ないので増殖はしにくいですが、生育が停止した状態にしておいて、土壌に撒く時にエサとなる油粕等々と一緒に投入します。

方法としては、一旦籾殻などにえひめAIをかけて、10日程保管して菌を定着させてから使います。

えひめAIの散布前に

他に、土壌に灌注するにしても、事前に木酢液をまいておく方法もあります。

木酢液により菌を死滅させ、その後一週間ほどたって効果がなくなった頃にえひめAIを撒くと生存期間がのびることが期待されます。

えひめAIに限らず、微生物資材はちょっとした条件により効いたり効かなかったりします。

今まで使って効果がないと思ったものでも、こうしたちょっとした工夫で意外と効くかもしれません。

色々と、試してみたらいいかもしれませんね。

<参考にした本>

木嶋利男 拮抗微生物による病害防除 農文協

百町満朗監修 拮抗微生物による作物病害の生物防除
クミアイ化学工業

<関連投稿>

えひめAI:作り方と個々の菌の働き

えひめAIの菌を長生きさせるには

コメント

  1. 堀越 幸子 より:

    今まで農薬を一切つかわずモミぼかしなどで野菜を作りましたが、これからは、えひめAIで本格的野菜作りに専念したいと思っております。
    色々とアドバイスを頂けると幸いです。
    宜しくお願い致します。

    • kchan-shokai より:

      えひめAIもぼかしも良い資材で、上手く使いこなしたいものですね。
      こちらこそ、宜しくお願いします!

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