待ち遠しいですね。
植物も休眠から覚め、木々は芽吹き、草花は小さな芽を出します。
それとともに、害虫たちも眠りから覚め、活動を開始します。
一般に虫たちはほとんどの種類が休眠します。
冬眠する理由
虫たちは小さく、と体に占める表面積の割合が大きくなり、外の寒さの影響を強く受けるためです。
しかも昆虫は変温動物。
寒いと体温も下がり、動きにくくなります。
従って、寒さは休眠でやり過ごすのが賢明な生存戦略となります。
さらにこの他にも休眠するメリットはあります。
一つは、食料です。
冬は餌が少ないので、エネルギーの節約面からも余計な活動をしないほうが得です。
もう一つは、生育のステージを揃えること。
みんなが一斉に成虫になれば、生殖するときに容易に相手が見つかります。
それで具体的な休眠の様子についてですが、虫の休は植物の休眠とかなり似たところがあります。
休眠の時期
まずは休眠する時期。
秋になって、日が短くなることによって休眠の準備を始めます。
寒くなったために休眠するわけではありません。
温度で決めると、異常気象などで、季節外れの時期に休眠することになる危険があるためです。
なお、日が短くなって、というのは、より正確に言えば、夜の時間の長さによってです。
明るい状態は、何かの陰になることにより、すぐ妨げられますが、暗い状態の中で日周以外に明るくある要因は、自然環境の中では普通はありませんから良い信号となります。
また、時期としては秋が最も眠りが深くなります。
そして、冬の寒さと日が長くなるのを感知して休眠から覚めます。
これらは、多くの植物の休眠と同様です。
昆虫、植物と、種類が違っても同じような方式を採用しているということは、それが自然の摂理にあった、合理的な手段なのでしょうね。
休眠時の生育ステージ
例えば、ヨトウムシ、モンシロチョウはサナギ
カメムシやアブラムシ(温暖地)は成虫
アブラムシ(寒冷地)やバッタは卵
アワノメイガやニカメイガは幼虫
といった具合です。
ネキリムシやキイロアザミウマ、ウンカなどです。
ウンカは日本の冬は越冬できず全部死滅してしまい、毎年外国から飛来してきます。
キイロアザミウマは露地では越冬できず、ハウスの中で越冬します。
ネキリムシは幼虫で、土の中の比較的温度が安定した状態で過ごします。
ちなみに、休眠しなくても、休止はします。
休眠と休止は見た目は似たようなものですが、実際は違います。
休止は単に活動を止めているだけで、暖かいと動き出します。
越冬する場所
越冬する場所も種類により様々です。
カメムシの越冬は、落葉の下や人間の家屋、小屋など。
アブラムシの卵は木の芽、樹皮のシワ、実の表面、草木の若い葉の裏など。
とすると、こも巻きなどをすればアブラムシの駆除に効果があるようにも思えます。
しかし、実際はこも巻きは害虫よりも益虫を駆除する効果の方が高いようです。
あるいは、ヨトウムシは地中で越冬します。
そうであれば、畑は植物残渣を片付けて耕耘することが、有効と思われます。
しかし、土の養分の流亡や、土壌流出を防ぐためにはこういったものは残しておいたほうが良いように思われます。
このように、害虫を駆除しようとするとトレードオフで別の弊害が出るところが難しいものです。
<参考にした本>
藤崎憲治 大串隆之 宮竹貴久 松浦健二 松村正哉 昆虫生態学 朝倉書店
日本植物防疫協会 植物防疫講座第3版 害虫・有害動物編 日本植物防疫協会
<関連記事>