この冬は、ずいぶん暖かいですね。
昼間などは、ちょっとした作業で汗が出てしまいます。
とは言え、朝晩はやっぱり寒いです。
路地の植物にとっても、寒さが厳しくなりました。
あたたかくしてやる必要があります。
方法としてはトンネル、マルチ、ベタがけなどなど。
トンネルでは、普通は透明なビニールシートが使われます。
これにより、日中は太陽光を浴びてトンネル内が温まり、地温も高まります。
ですが、夜は違います。
場合によっては、トンネルをしない時より温度が下がることもあり、注意が必要です。
晴天時に、放射冷却現象があるためです。
トンネルの外では、風により地上の暖かい空気が土の表面の空気と入れ替わり、温度を高めるため温度の低下は抑えられます。
ですが、トンネル内では風が遮られるために、温度が下がりやすくなるのです。
冬の寒風でも、植物にとっては温かい風なのです。
従って、夜に地温の低下も防ぐにはマルチと併用することが考えられます。
マルチについては、いろいろな資材があります。
藁、堆肥、籾殻などの自然素材もありますが、今回はビニールシートを中心に述べていきたいと思います。
というのは、ビニールシートも色々あり、その中のどれを用いるのが良いか諸説あり、あまり整理されていないように感じられるためです。
その中でも紛らわしいのが、黒色ビニールシートの役割。
黒色は、地温を下げるとよく教科書などには書かれていますが、逆に地温を上げるという説もあり、まちまちです。
これは、いろんな状況をごちゃごちゃにしているからではないかと思わます。
熱の出入りについて
状況を整理するために、熱の出入りを要因別に分けてみましょう。
(詳細はこちらにも書いていますので、必要に応じてご覧いただければと思います → 夜温の低下と霜害の対策 )
熱の出入りは、放射、伝熱、対流、潜熱などがあります。
放射とは、赤外線などの光が直接ものに当たって熱を生じさせるものです。
例えば遠赤外線ヒーターのなどで、ヒーターから出る光(遠赤外線)が私たちの身体に当たり、暖めてくれます。
このような現象は、ヒーターだけでなく、温度に応じてどんなものにもあります。
伝熱とは、物質が移動せずに熱だけが伝わること。
鉄棒をにぎってもう片方を火であぶると、握った側も暖かくなってくるようなものです。
対流とは、空気や水の流れにより温度を伝えるもの。
石油ファンヒーターなどがよい例です。
ファンにより空気を回してやることにより、熱を部屋全体に行き渡らせて暖かくします。
潜熱とは、水が蒸発したり凍ったりする時に出る熱です。
水が水蒸気になる時は、熱を周りから奪うことにより温度が下がり、逆に水蒸気が水になる時には、周りに熱を与えて温度が上がります。
また、水が凍る時は周りに熱を与え、氷が水に溶ける時には奪い、温度が下がります。
これらを全部の収支により温度が変化します。
昼間のマルチの効果
これを踏まえて、昼間、つまり日射が当たる時と夜中の日射のない時の熱の出入りを考えてみましょう。
マルチを敷いていないときには、太陽光が土の表面に直接当たります。
これにより土が温められ、伝熱により地温が高くなります。
それにより、地中の水分が蒸発します。
その際に蒸発熱により地温の上昇が抑えられます。
それとともに、地中の水分が少なくなり、熱が伝わりにくくなって伝熱しにくくなります。
そうすると地温の上昇が抑えられます。
これらを総合的に差し引きして、残りの分だけ温度が高くなります。
これに対して、透明マルチをしたとします。
土の表面が温められ、伝熱により地温が温まるところまでは同じ。
しかし、そのあとの水分の蒸発はマルチにより抑えられます。
従って蒸発熱も抑えられ、地温はマルチをしない時よりももっと高くなります。
黒マルチした時の昼間の温度
次に黒マルチの場合ですが、これは少し難しいです。
よく、教科書などでは黒マルチは日射を遮るため、地温を下げると書かれています。
しかし、黒マルチ自体は日光を吸収して熱を持ちます。
これが地面に伝熱され、温が温まる効果が期待できます。
さらに、マルチによる水分の蒸発は抑えられる効果は透明マルチと同じです。
ただし、透明マルチは土の表面に直接日光が当たって熱せられるのに対して、黒マルチはマルチ資材を一旦温めるというワンクッションが入っていますので、透明マルチほどの温度上昇は起こらないと考えられます。
これらを総合的に勘案すると、日中は透明マルチ>黒マルチ>マルチなしの順番に地温が高まると予想されます。
いろんな文献を見てみますと、そうなっているデータもあれば、順番通りになっていないデータもあります。
これは、実験に用いたマルチの性質や気象条件など、様々な理由があると思われます。
夜の温度低下
では夜間(日射のない時)ではどうでしょうか?
地中から地表面に熱が伝わり、地表面から外に向かって赤外線が放射されて熱が逃げます。
ただし、温度低下により水蒸気が結露しますが、これは地面の温度低下を抑える働きを持ちます。
従って湿度が高いと結露もしやすくなり、温度は下がりにくくなります。
これを踏まえて、透明マルチを敷いたときの状況を考えてみましょう。
マルチを敷くと、昼間に高温になっている分、夜に温度が下がったとしてもまだマルチなしより夜温は高くなるでしょう。
あと、マルチにより土壌水分が保たれているので、湿度を高め、温度低下を防ぐ働きもあります。
しかし、放射冷却による温度低下を防ぐ働きはありません。
黒マルチは上記の透明マルチの働きに加え、黒色により土壌からの放射を防ぐ働きがあります。
従って、夜の温度は
黒マルチ>透明マルチ>マルチなし
の順番になることが予想されます。
まとめると、日中、夜間ともマルチなしは温度が低くなります。
透明は日中は最も温度が高くなりますが、夜間は黒マルチほどは保熱効果がなく、昼夜差がつきそうです。
黒は、日中は透明マルチほどではないですが、夜間は温度が高くなりそうです。
でも現場では・・・
以上が一般論ですが、このようにならないデータもよく見かけます。
最も影響が大きそうなのは、透明マルチでは雑草が生えるかもしれないことです。
それが光を吸収したり土壌水分を吸収したり、あるいは呼吸により熱を発生させたりします。
このため、日中に期待通り温度が上がらなかったり、あるいは夜温が下がらなかったりするかもしれません。
微生物の影響も考えられます。
黒マルチは紫外線を通しにくくして微生物の繁殖を促し、温度を高める可能性があります。
土の色も影響しそうです。
例えば、水分が非常に低くなり、土がカラカラに乾いて白くなっていたりすると、日中に光が反射されて放射熱が十分吸収されないかもしれません。
以外とバカにならないのが植え穴。
植え穴が大きいと、水分が抜けやすくなります。
これにより、日中の温度の上昇効果や夜間の温度低下抑止効果が抑えられると考えられます。
こうした色んな効果を考えると、結局自分の圃場で温度を測って確認した方が良いという、身も蓋もない結論になりそうです。
透明マルチと黒マルチだけで比較しても、これだけ複雑になります。
マルチにはこのほか、白や銀、緑色マルチなども市販されており、これらもそれぞれ特徴的な効果があります。
なかなか奥が深いものですね。
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