乳酸菌により、漬物は保存性が高まったり、風味豊かな味わいをもたらしてくれます。
さらに、乳酸菌は食べ物だけでなく、えひめAIなどの微生物資材にも使われています。
そこで、今回は乳酸菌について取り上げてみたいと思います。
どんな菌?
乳酸菌は、細菌の仲間です。
ここで細菌について簡単に述べると、細菌は別名バクテリアとも言います。
細胞壁で周りを覆われているとか、細胞内に核を持たない、などの特徴があります。
細菌の中で、乳酸をたくさん作る菌を乳酸菌と呼びます。
少しでも乳酸菌を作る菌はいっぱいいますが、少しだけでは乳酸菌とは呼びません。
たくさん乳酸を作る乳酸菌も、1種類だけではなくたくさんいます。
ざっと280種類くらいになります。
大きさは数ミクロン程度です。
細菌には、丸っこい体の球菌と棒状の桿菌がいて、乳酸菌の280種類の中には、そのどちらもいます。
乳酸菌の行う乳酸発酵は、嫌気発酵、すなわち酸素を利用しない発酵です。
糖から乳酸を作ります。
一般には空気のない嫌気的状態を好みます。
が、好気的な条件でも生きて行くことができます。
なお、乳酸菌の仲間に入れるかどうか微妙な菌として、ビフィズス菌もいます。
ビフィズス菌は、普通の乳酸菌と違って空気があると生きていけない偏性嫌気性菌です。
また、乳酸だけでなく、酢酸発酵するという点でも大きく異なっています。
ただし、乳酸をたくさん作るという点や他の乳酸と同じように乳酸菌飲料に使われるので、乳酸の仲間に入れることもあります。
動物性乳酸菌と植物性乳酸菌
乳酸菌は、桿菌とか球菌とかいう区別とは別に、動物性、植物性という区別をすることもあります。
ただし、このような分類は学術的なものではなく、慣用的な分類です。
動物性、植物性というのは、乳酸菌の性質を表すわけではなく、乳酸菌の住んでいる場所を指します。
動物性の乳酸菌は、主に動物の体内とか乳の中に住んでいます。
動物の体内は温度もほぼ一定ですし、乳は栄養価にも優れているため、ここに住む乳酸菌は比較的弱い菌です。
ビフィズス菌も、動物性に分類されます。
この動物性乳酸菌を利用した発酵食品としては、チーズやヨーグルトなどがあります。
えひめAIなども、ヨーグルトから作りますので、動物性ですね。
植物性は、植物の表面とかいろんなところに住んでいます。
外気に露出した場所でも生きていけるということで、環境への適応力は動物性よりも強いです。
多くの漬物はこちらの乳酸菌由来です。
漬物のような塩分が高い環境でも生きていけるので、この点からも強い菌だということがわかるかと思います。
あと、乳酸菌は多くが嫌気性ですが、ぬか漬けで繁殖しているのは微好気性で、少しだけ酸素が必要なタイプです。
植物性乳酸菌は、他の菌と共生しやすいという特徴があります。
そういった点では、えひめAIなどの微生物資材も、ヨーグルトの乳酸菌よりも、漬物の方がいいかも知れませんね。
乳酸菌の効能
乳酸菌の効果として、発酵食品からの観点と、農業資材からの観点の二つの面から考えてみたいと思います。
発酵食品としては、何といっても健康に対する効果が魅力的です。
乳酸菌を用いた発酵食品として最も特徴的なのは、有害菌の繁殖を防ぐ働きです。
乳酸菌が分泌する乳酸により、その食品が酸性になります。
しかし、ほとんどの雑菌は酸性が苦手なので、これにより繁殖が抑えられます。
また乳酸菌は、乳酸以外にも低分子の化合物、例えばギ酸や過酸化水素なども作ります。
これらも乳酸と同様、有害菌には苦手です。
さらに、最近注目されているのがバクテリオキシン。
これは、ある種の有害微生物に対して抗菌効果を持ちます。
乳酸菌の作るバクテリオキシンの中の一つに、ナイシンというのがあります。
これがなかなか優秀で、広範な有害菌に効き、チーズやハムの保存料として実用化されています。
有害菌の繁殖と関連しますが、免疫力を高めるする効果もあります。
これは、一つには他の菌との共生によります。
乳酸菌を取り入れることにより、腸内に住むビフィズス菌の働きが強まり、大腸菌の増殖を抑えます。
これにより、整腸作用をもたらします。
このように腸内環境が整うと、免疫力もアップすることが知られています。
腸内にある免疫細胞が、無害有用なものを受け入れ、有害なものを排除します。
ガンを抑える働きを持つとされるNK細胞も、活性化されます。
ちなみに、乳酸菌は腸に入る時点で多くが死んでしまいますが、それでも大丈夫です。
死んでいても効果があることが、調べられています。
他に、高血圧を抑えるとも言われています。
乳酸菌がタンパク質を分解する際にできる物質が、血圧降下作用をもたらすとのことです。
微生物資材として畑に撒く場合も、上記と同様に理解できます。
乳酸や各種生成物質が、有害微生物の繁殖を抑えます。
また、タンパク質を分解して生成するアミノ酸は、植物にとってのよい窒素源となります。
乳酸菌を増やすには
上記の通り、様々な効能があるとすれば、ではどうしたら乳酸菌を増やせるのか、という話になりますね。
まず、健康面では、単純に乳酸菌食品を摂取することが考えられます。
前述の通り、動物性乳酸菌と植物性乳酸菌について書きましたが、それぞれ働きが違うので、どちらか一方だけでなく両方とるとよろしいかと思います。
また、植物性乳酸菌は他の菌と共生しやすいため、これを利用することも考えられます。
例えば、納豆菌とか他の発酵食品と併用すれば、上にあげた効果もさらに高まることが期待できます。
農地で増やすとすれば、土着の乳酸菌にエサを与えること、そして他の菌との共生を利用すること考えられます。
餌としては、えひめAIとか米ぬかとか色々あります。
えひめAIにも乳酸菌は入っていますが、途中で死んでほぼ死んでしまうと思われます。
ただし、それを餌として土着の菌が利用できます。
共生する菌としては、こうじ菌とか酵母菌とかが考えられます。
麹菌であれば、でんぷんを糖化して、それを乳酸菌が利用できます。
酵母菌とも、互いに必要な成分を供給しあえます。
酵母菌は、乳酸菌が出した酸性の状態を好み、乳酸菌は、酵母菌が合成したアミノ酸を利用します。
まとめ
乳酸菌は、糖から乳酸を生成する菌の総称で、たくさんの種類を含んでいます。
乳酸菌は大きく動物性と植物性に分けることができます。
動物性はチーズやヨーグルトなどの乳製品の発酵に主に用いられ、植物性は漬物に主に用いられます。
乳酸菌は人間の健康にも、畑の健康にもよい、優れた微生物です。
また、他の有用菌との共生により、自分も他の有用菌も生育が促進されるというクラスの優等生的な存在です。
食に、畑にと、いろいろ利用していきたいですね。
コメント