秋から春にかけては起こる霜害は、植物に大きな被害が出るため注意が必要です。
真冬の一番寒い時期でなく、秋とか春の、植物が寒さ慣れしていない時期に特にダメージが大きくなります。
霜を防ぐには、夜温を高く保つのが肝要です。
この際に、気をつけなければならないのが、放射冷却現象です。
熱の伝わり方
放射冷却現象を理解するには、夜間の熱の伝わり方を理解する必要があります。
そもそも、熱の伝わり方には、放射と伝導と対流、潜熱の4つがあります。
熱伝導は、物質が移動せずに熱だけが伝わること。
鉄の棒の一方をにぎってもう片方を火であぶると、握った側も暖かくなってくるようなものです。
対流は、空気や水の流れにより温度を伝えるもの。
石油ファンヒーターなどがよい例です。
ファンにより空気を回してやることにより、熱を部屋全体に行き渡らせて暖かくします。
放射は、赤外線などの光が直接当たって熱を生じさせるものです。
例えば遠赤外線ヒーターがこれに当たります。
ヒーターから出る光(遠赤外線)が直接私たちの身体に当たり、暖めてくれます。
このような現象は、ヒーターだけでなく、どんなものにもあります。
ある温度の物質は、その温度に応じて赤外光を放射します。
潜熱とは、水が蒸発したり凍ったりする時に出る熱です。
水が水蒸気になる時は、熱を周りから奪うことにより温度が下がり、逆に水蒸気が水になる時には、周りに熱を与えて温度が上がります。
また、水が凍る時は周りに熱を与え、氷が水に溶ける時には奪い、温度が下がります。
放射冷却
放射冷却は、地面から赤外線が放射されて熱が逃げる分に比べ、外から熱が入ってくる分が少ない時に起こります。
その時に大気がどのようになるか、詳しく見てみましょう。
普通、大気は地面に近いほど、気圧が高くなり、温度が高くなります。
風や熱の出入りを考えなければ、気圧が高いと、温度も高くなって体積が縮みます。
高校の化学の授業で習ったボイル、シャルルの法則ですね。
圧力×体積/温度の値が一定になるというものです。
そして、上に上がるほど気圧が下がるので、体積が膨張するとともに温度が下がります。
だいたい、100m上に上がると、1度弱低くなります。
これが、昼間、地面が温められると、上空と地面の温度バランスが崩れて、地面の温度が過剰に高くなります。
そうなると、下の方の空気は上に上がろうとするので、上空と下の方との間に滞留が起こり、熱が混ざります。
放射冷却はその逆で、地面の熱が奪われ、上空との温度差が少なくなります。
地面が過度に冷やされ、地面の空気は収縮して重くなります。
その結果、安定な状態になって、風が起こりません。
さらに上空の冷たい空気は重いので、冷たい空気が静かに下に降りてくることになります。
そうなると、ますます空気が動きにくくなって、冷気が下に溜まったままになります。
その結果、地面付近が著しい低温となってしまうのです。
このような現象は、地形にも依存します。
山の斜面や尾根では、下に冷気が流れていくため温度の低下はさほどでもありません。
盆地などでは、冷気が止まって低くなりやすいです。
どんな天気に注意が必要?
放射冷却現象が特に激しいのは、主に以下の3つが重要です。
1.雲がない時
雲からの赤外光の放射がないためです。
2.風のない時
上述のとおり、対流により地表面に熱が運ばれます。
人間にとっては冷たい北風であっても、植物にとっては暖かい温風と考えた方が良いですね。
3.湿度
水蒸気が露になる際に熱が、放出されます。
さまざまな霜害対策
普通、温度を上げるといえばビニールトンネル等を思いつくかもしれません。
これにより、昼間の地温を上げて、夜の温度の低下も和らげることが期待できます。
しかし、実際には、かえって夜間の温度が下がる場合もあるので、注意が必要です。
トンネルでぴっちりと締め切ってしまうと、風がシャットアウトされて、対流の効果がなくなってしまうためです。
従って、夜になると、トンネルの裾をあげて風を入れることもされます。
かなり面倒ではありますが。
これがビニールでなく、不織布でトンネルしたり、ベタがけしたりするのは、地表からの赤外線の放射を抑えるので効果的です。
具体的にどんな資材が赤外線の放射を抑えるかについては、農業資材のカタログとかインターネット検索で調べられます。
他に、トンネルやハウスなどで気密が高ければ、水を撒くことも有効です。
湿度を高めて、赤外線の放出を防ぎます。
また、夜中に水蒸気が結露する際にも熱が発生します。
まいた水で、植物の表面は速やかに凍ります。
しかし、水が凍る時に熱が発生して、細胞内が凍るのを防ぎます。
この他、扇風機等を使って風を積極的に送ることも行われます。
あるいは、小さい面積であれば、敷き藁などは簡便で効果も高いです。
色んな方法があるので、自分のやりやすい方法で対策を打ちたいですね。
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